ご興味を持って下さりありがとうございます!
私の趣味が爆発したホッケーエルリ(本編はpixivにてシリーズ化しています。)です!
今回はストーリー分岐ありのR18小説につき、お読みいただく前に年齢の確認と内容の注意事項を掲載させてください。
どの選択肢を選んでいくかで話の中にいくつかの分かれ道が出てきます’。
全て同じハピエンに繋がっていきますが、途中のプレイの内容が変わってきます。
「何でも許せる方向け!」と記載してしまえば早いのですが、気にされる方が多いのかなという印象がある内容を以下に記載させていただきます。
お好みと異なる場合は注意して読み進めていただくか、もう一つの展示長編小説(ドムサブエルリ)を楽しんで頂けると嬉しいです。
★無理やりや暴力的な描写は一切ありません。
★スカや流血はありません。
★愛し合ってるえっちしかしません。
★進む方向によって、攻めフェ、*舐め、潮吹きあります。
つまり位置づけはエロ本です。
年齢と上記をクリアした方は...FACE OFF!!
お楽しみいただけますように!いってらっしゃい!
[[「YES, I am over 18 and ready for the game!」->Stick Together]]
(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#f3d9fa))
「そうだな、大丈夫だとは思うが慣れるまでは気を付ける。」
「あぁ、是非そうしてくれ。スポーツだからある程度は仕方ないと分かってはいるが、お前が怪我するのは見たくない。」
「分かってる。」
最近のエルヴィンは随分と過保護だ。
前からその気配は感じていたが、一緒に住み始めるようになってから過保護さに拍車がかかっている気がする。
思えば昨年の秋にハイキングに行き、少しぬかるんだ地面で数メートルの斜面からリヴァイが転落し右足の膝辺りを鋭利な木の枝で抉ったことがあった。救急車を呼ぶ必要もなくエルヴィンにおぶわれて来た道を戻り、スマホで調べた近くの病院に行くと結局4針ほどを縫うことになったのだが、骨や筋肉に異常があったわけではなく、開いた皮膚を縫って止めてくっつくのを待つという単純なことだとリヴァイは思っていた。
趣味であれ何であれ、スポーツを楽しむ者にとって長引いたり癖になる怪我の方が何百倍も怖いからだ。
だが、数日前に雨が降ったことを知りながら問題ないと判断してハイキングを決行したのは自分だと、エルヴィンは暫くの間酷く気を落としていた。
リヴァイが何度「もう治った」と告げても信じようとしないエルヴィンに、気に掛けてくれる有難さ以上に苛立ちを募らせたリヴァイが、どれだけ治ったか見せてやる、と良いムードになったある日の夕方にエルヴィンの厚い胸板を押し倒し、腰に跨ったのも今となっては懐かしい。
怪我に良くないと、セックスを控えていたエルヴィンの身体の反応は面白いほどに正直で、リヴァイが跨った瞬間は「傷が開く」やら「痛みがぶり返す」やら、しまいにはどうしたって残るのに「傷が残る」とごねていたのが嘘のように、ゆらゆらとリヴァイがエルヴィンの中心を体内に埋めて膝を立てたまま腰を揺らし始めると、あっという間に息を上げて跨るリヴァイの腰を掴んでは前後に揺すり始めた。
あっけないほど早く達したエルヴィンは一瞬だけ気まずそうな顔でリヴァイを見上げたが、熱を吐き出したペニスを抜く間もなくあっという間にリヴァイはソファに押し倒され、大きな身体の下で声が枯れるまで喘ぐこととなった。
「何を笑ってるんだ。」
「何でもねぇよ。」
「どうせうるさい奴だと思ってるんだろう。分かってるよ、でもお前が血を流すのはもう見たくないし、怪我したお前をおぶるのも、病院に駆け込むのも嫌なんだ。」
「分かってる。笑ったのはそうじゃねぇ、お前があまりにファックはしないと頑なだったわりにあっさりとイッちまったのを思い出しただけだ。」
その言葉にスニーカーに履き替えてスケートをホッケーバッグに入れようとしていたエルヴィンの手が止まった。リヴァイは自分の紐を解きながら思わずニヤリと唇の端を持ち上げた。
「あぁだこうだ言ってた割に、俺が腰振りゃ一発だったな?」
スケートのアキレス腱側を押さえ、少しだけ無理やり足を抜いた。
熱の籠った足先に外気が触れて心地いい。確かにエルヴィンが言う通り、そろそろ切り上げ時だったかもしれない。
屋外のインラインスケートリンクはエルヴィンと一緒に住む家から車で3分ほどの距離にある。歩いて、もしくはスケートで滑って来ることも出来るが正式な練習の時は防具を全て付ける為荷物が多くなるし、それでなくても練習後はもうそんな力が残っていないことが多い。こういう遊び半分の時もやはりさっさとセントラルの空調が入った快適な家に戻りたいとつい横着をして毎回車で来ている。
「…さっさと帰るぞ。」
エルヴィンが憮然とした表情でスケートを寄越せと手を差し出して来た。
「おいおい、キレてんじゃねぇよ。」
「別にキレてない。」
言われるまま脱いだスケートを渡すとエルヴィンがバッグに突っ込んだ。
消臭スプレーをしていないことに気付いたが、何となくそれを指摘する空気じゃなさそうでリヴァイは口をつぐんだ。
「早く靴履いて。」
「あぁ…。」
リヴァイがスニーカーに足を突っ込んでいる間に、エルヴィンはホッケーバッグの底についたキャスターを引きながら歩き出した。その後姿を見て、ちょっとしたジョークだろうが、とリヴァイは小さく舌を打ってから追いかけた。
6月も下旬に差し掛かり、梅雨というシーズンがある国もあるようだがこのエリアにはそのようなものはなく、ただ穏やかだった春の気候が既に夏へと移行し、ぎらぎらとした陽射しに肌が焼ける感覚がある。
この地域に引っ越して来たあと、このパブリックのインラインホッケー専用リンクでエルヴィンやナイル、ミケが所属する社会人ホッケーチームの練習を見かけたのは本当に偶然だった。サッカーや野球のフィールドやバッティングの練習ネット、そして子どもたちが声を上げて走り回る大型遊具が並んだ公園などが集まったこのエリアは地域でも名前のある場所だ。
取り囲むようにいくつもの大きな池と遊歩道があり、更にその外側には街並みを楽しめるレストランや店が立ち並んでおり、時期に応じたイベントが毎週末開催されている。
リヴァイが以前叔父から留守を頼まれて住んでいたコンドはリンクの西側、そして今一緒に暮らしているエルヴィンの家は東側だった。
遠方から引っ越して来てアイスホッケーもインラインホッケーも経験のない小柄な男がチームに入った時、誰もが驚いた顔をしたが、どちらかと言えばこの地域でもマイナーなスポーツであったためか、それとも大人の付き合いというのはこういうものなのか、誰もが驚くほど温かく迎え入れてくれた。もともとフィギュアスケートの経験があったリヴァイは抜群の運動センスも手伝って、一気に試合で十分活躍できるプレーヤーとなった。
それでも深く仲間とは関わらず、一定の距離を置いていたリヴァイに最初に声を掛けたのがエルヴィンだった。今こういう関係になってもまだ何故自分なんかに声を掛けようと思ったのかはっきりと尋ねたことはなく謎のままだ。リヴァイはいつか聞いてみても良いかなと思った。
ホッケーの道具は全て先に車へ向かったエルヴィンが積んでしまったから、リヴァイは既に運転席に座っているエルヴィンに少し遅れて、そのまま助手席に乗り込んだ。
「なぁ、怒ったのか。」
最近少し引っ掛かりが出て来たシートベルトを何度か引っ張り直して止めると、エルヴィンがギアをバックに入れて駐車場を出た。
「だから怒ってないって言ってるだろう。」
「じゃあ何で先に車に行ったんだよ。」
「もしかして待ってて欲しかったのか?」
「あぁ?」
「置いて行かれたから、俺が怒ったってそう思ったんだろう?」
「そうじゃねぇけど。」
「別に怒ってないよ。早く家に帰りたくなっただけだ。」
エルヴィンはまっすぐ前を見て、年代物のFordをゆっくりと池の周りを周る外周道路へと進めた。
「リヴァイ、手を。」
「何だよ?」
リヴァイは眉を寄せてエルヴィンの横顔を見てから、差し出された手に自分の手を重ねた。
指を絡めて手を繋ぐのかと思っていたその手が強い力で引っ張られると、強引と呼べるほどの力でエルヴィンの股の間の硬いものに押し付けられた。ぎくりと手を強張らせたリヴァイを横目で見てエルヴィンが笑う。
「帰ったら、またあっさりイカせてくれる?」
薄いスポーツウェアの生地を押し上げるどころか、腹に先が付いているのではないかと思う勃ち上がり方だった。
「て、てめぇ、この姿で駐車場歩いて来たのかよ。」
手を離そうとすればするほど押し付けられて、リヴァイは早々に諦めて手の力を抜いた。それにしてもデケェな。運転先に座る恋人の足の間、完全に勃起しているものに触れながらリヴァイは澄んだ青空にキラキラと光る池の水面を見た。
「あの時はまだ気配だけだったからセーフだ。」
「セーフなわけあるか。」
「因みに完勃ちしたのは運転席に座ってお前がこっちに気怠そうに歩いてくるのを見てた時だ。」
「聞いてねぇ。」
「勃ったか?」
「勃ってねぇ。」
「触って良い?」
「触るな。」
今度は手首を掴むエルヴィンの手をしっかりと振り払って、自らの股間を守る様に手で覆った。エルヴィンは声を洩らして笑いながら、どこまで本気か分からない手を伸ばしてリヴァイの腿の上に置いた。
性的な何かを連想させる動きではない。
だがゆっくりと腿の上を上下に撫でられて、時折内腿に入り込んだ指に力が加わって筋をなぞられるその感覚に、ぞわりと腰の奥底が揺れた。
それを知ってか知らずか、エルヴィンが横目で笑みを向けながらリヴァイの足の上をぽんぽんと叩いた。そして腿から離した手でクーラーを止め、運転席と助手席の窓を全開にする。しっとりと汗で濡れ、今はまた別の理由でも熱を持ちだした身体に生温いとは言え外の風は心地良かった。
[[NEXT->3]]
(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#fff4e6))「何度その話をすれば気が済むんだテメェは。」
エルヴィンのしつこすぎる話の所為か、ベンチに座ってからも汗が引かないこの暑さの所為か、リヴァイが吐き出した言葉は思っていた以上に刺々しく響いた。
最近のエルヴィンは随分と過保護だ。
前からその気配は感じていたが、一緒に住み始めるようになってから過保護さに拍車がかかっている気がする。
思えば昨年の秋にハイキングに行き、少しぬかるんだ地面で数メートルの斜面からリヴァイが転落し右足の膝辺りを鋭利な木の枝で抉ったことがあった。
救急車を呼ぶ必要もなくエルヴィンにおぶわれて来た道を戻り、スマホで調べた近くの病院に行くと結局4針ほどを縫うことになったのだが、骨や筋肉に異常があったわけではなく、開いた皮膚を縫って止めてくっつくのを待つという単純なことだとリヴァイは思っていた。
趣味であれ何であれ、スポーツを楽しむ者にとって長引いたり癖になる怪我はいつも身体の中に炎症を起こし、その方が何百倍も怖いからだ。
だが、数日前に雨が降ったことを知りながら、問題ないと判断してハイキングを決行したのは自分だと、エルヴィンは暫くの間酷く気を落としていた。
もしかしたらそのことも必要以上にリヴァイの怪我を心配する理由の一つなのかもしれないと、刺々しい言葉を吐いてから思った。
傷付けたかと伺うようにエルヴィンを見ると、エルヴィンは傷付くどころか眉を寄せて不機嫌そうにこちらを見ていて、反射的にリヴァイの心が戦闘態勢に入る。
「お前のことが心配だから言うんだ。何と言われようと何度でも言うよ。」
「だからそれを止めろって言ってんだよ。何でもかんでもしつこく口出してきやがって、てめぇのガキじゃねぇぞ。」
リヴァイは乱暴な手付きでスケートの紐を解き、緩め切ってもいないのに後ろを掴んで強引に足を引き抜いた。隣ではエルヴィンがスケートをホッケーバッグに放り込んで立ち上がるところだった。
二人で滑る時は防具が要らないため一つのバッグに二人分のスケートを入れてくる。
だが、今のエルヴィンはリヴァイがスケートを脱ぐのを待つつもりはないらしく、隠しもしないどころかわざと聞かせるように吐いた大きなため息と共に、さっさとキャスター付きのホッケーバッグを引いて駐車場へ向かってしまった。
言わなくても良いことを言ってしまった後悔と、それに返って来たエルヴィンの態度の両方に舌を打ってから、リヴァイはもう一足のスケートの紐を乱暴に緩めにかかった。
怒ってはいてもさすがに置いていくつもりはないらしく、脱いだスケートとスティックを持って駐車場に向かうと、駐車場には見慣れたネイビーのFordが停まっていた。トランクも開けたままになっていて、運転席ではエルヴィンが最強にしたエアコンの風に前髪を揺らしながらスマホを見ているようだった。
トランクに荷物を放り込んでからボタンを押して電動でトランクを閉める。このボタンがないと、リヴァイにトランクを掴むのは不可能だった。
助手席に回り、ステップを踏んでから車高の高い座席に乗り込むと、スマホから顔を上げたエルヴィンが早速憮然とした顔を向けて来た。
「…んだよ?」
「何か言う事あるだろう。」
「何もねぇよ。テメェこそあるなら聞いてやってもいい。」
こういう時、エルヴィンは絶対に折れない。
怒っているということを隠そうともしないエルヴィンの顔を睨み返しながら、若干の後ろめたさを感じてリヴァイはついにふわりと視線を外して窓の外へ向けた。
その瞬間エルヴィンが勝ち誇ったように笑った気配がして、リヴァイが反射的に舌打ちを打つと。
「暑くて苛々してたんだよな。お前は暑いとすぐ不機嫌になる。」
「……。」
ハンドルに身体を凭れさせるようにして、エルヴィンがこちらを覗き込んで来て、リヴァイは更に顔を外へ向けた。
「ほら、言ってみろ。もう怒らないから。」
「うるせぇな。」
「リーヴァイ。」
横から伸びて来た手が頬に触れて、指の背で頬が撫でられた。ちらりと視線を向けるとエルヴィンは「ん?」と存在感のある両眉を上げてこちらを見ていた。
「…クソ、暑いから苛々した。…嫌な言い方して悪かった。」
「はい。…俺もしつこかったのは謝るよ。この前ハイキングで怪我しただろう。あれからお前の怪我に神経質になってる自覚はある。もうスケートのことは言わないよ。許してくれるか?」
先程までいかにも自分が優勢だと自信たっぷりだった眉毛が、今度は眉尻を下げて急にしおらしい。
全部エルヴィンの計画通りだと分かっている。分かっているのに手の上で転がされるのも悪くないと思わせるから性質が悪いのだ。
顎を下げてまるで上目遣いで伺いを立てるように見つめられ、リヴァイは小さく頷いた。頷く以外にどうしろというのだ、と頷いてから小さく舌を打ったがそれくらいは許されるだろう。
「良かった、安心したよ。」
そう言ってエルヴィンが車をバックさせ、平日の昼間人気のない駐車場を抜け、大きな池を囲む周回道路へと抜けて行く。
このパブリックのインラインホッケー専用リンクでエルヴィンやナイル、ミケが所属する社会人ホッケーチームの練習を見かけたのは本当に偶然だった。サッカーや野球のフィールドやバッティングの練習ネット、そして子どもたちが声を上げて走り回る大型遊具が並んだ公園などが集まったこのエリアは地域でも名前のある場所だ。
取り囲むようにいくつもの大きな池と遊歩道があり、更にその外側には街並みを楽しめるレストランや店が立ち並んでおり、時期に応じたイベントが毎週末開催されている。
リヴァイが以前叔父から留守を頼まれて住んでいたコンドはリンクの西側、そして今一緒に暮らしているエルヴィンの家は東側だった。
遠方から引っ越して来てアイスホッケーもインラインホッケーも経験のない小柄な男がチームに入った時、誰もが驚いた顔をしたがどちらかと言えばこの地域でもマイナーなスポーツであったためか、それとも大人の付き合いというのはこういうものなのか、驚くほど誰もが温かく迎え入れてくれた。
もともとフィギュアスケートの経験があったリヴァイは抜群の運動センスも手伝って、一気に試合で十分活躍できるプレーヤーとなった。
それでも深く仲間とは関わらず、一定の距離を置いていたリヴァイに最初に声を掛けたのがエルヴィンだった。今こういう関係になっても未だ何故自分なんかに声を掛けようと思ったのかはっきりと尋ねたことはなく謎のままだ。いつか聞いてみても良いかもしれないと思った。
「何笑ってるの。」
ふとだらりと下ろしていた手にエルヴィンの指が絡んで来て、片手をハンドルの上にリラックスして乗せたままエルヴィンがこちらを見て微笑んでいた。
「別に何もねぇよ。チームのこと考えてた。オフシーズンだなって。」
「あぁ、まぁこうも暑かったらどうしようもないだろうな。まぁ今年の夏は念願の屋根が付くわけだし、秋以降は今よりも快適になるよ。」
エルヴィンとナイルが行政に掛け合って、この夏屋外リンクに屋根が付くことになっている。これまでは少しでも雨が降ればリンクが濡れて滑れなくなっていたのが、屋根が付くことで条件は格段に良くなるだろう。
「快適になって貰わないと困る。」
「屋根の一件で喧嘩もしたしな?」
そうだった、と思い出してリヴァイは唇を僅かに吊り上げて笑った。
ホッケーチームで出会い、友人という関係で数回の外出をし、そして大喧嘩をした後にストレートのエルヴィンと付き合うことになった。
そして今は同じ家に住んでいるのだが、思い返せばこうなることをいつ誰が予想できただろうか。人生分からないものだな、とリヴァイはエルヴィンと繋がった指をゆるゆると絡め合わせながらキラキラと光る湖に目を向けた。
「リヴァイ。」
ぼんやりと外を見ていると思いのほか至近距離でエルヴィンの声がして、振り返る前に首元でチュッとリップ音がした。
「ッおい…?」
信号で停車した状態で、運転席からエルヴィンが上半身を寄せてきて、振り返ったリヴァイの首元に顔を押し込むようにしながら首に、頬に、そして唇にとキスを落とした。
「んっ…。おいエルヴィン。」
「帰ったらしよう。」
「は?」
「セックスだ。お前の言うファックだ。」
再び首元にキスを落としながら話すから、息が掛かるくすぐったさにリヴァイは身を捩った。
「お前、…ガレージの掃除するんだろうが。」
「あぁ、もうそれは来週末にしよう。」
「ッひぁっ…!」
ぺろりと首筋を舐め上げられて、思わず飛び出た声にエルヴィンもそして出した張本人のリヴァイまでもが固まって見つめ合った。
「……車、進んだ。」
「真っ赤になってるぞ。」
「いいから進めよ。」
「くくく、はいはい。」
舐められた首筋を押さえながら、リヴァイは助手席の窓を全開にした。生温い風が勢いよく吹き込んで、汗は少し引くようにも感じたが、身体の奥深くに生まれた熱は燃えるばかりだ。
[[NEXT->3]]
(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#fff9db))車をガレージの中に入れてエンジンを切るなり、リヴァイが助手席から飛び降りてトランクへ回った。
高い車高の車から、小柄なリヴァイがぴょんと飛び降りる姿は何とも言えない可愛さがある。エルヴィンはいつも背後からそれを見ているのだが、「車から降りるとき可愛いね」と言ったことはない。睨まれるだろうし(それも嫌いではないけれど)きっとこの先「ぴょん」が見れなくなる可能性の方が高いからだ。
今日も安定の可愛さに口元を緩めていると、後ろからコンコンとガラスを叩く音がして、エルヴィンは運転席から電動のトランクを開けた。
片付けた時に消臭スプレーをしていなかったことが気になって仕方なかったのだろう。
リヴァイはホッケーバッグをトランクから引きずり取り出すと、迷うことなく用具にスプレーをし出した。エルヴィンはしてもしなくてもどちらでも構わないから、特に止めもせず好きにさせている。
洗えるものはすぐに洗って、洗えない物はスプレーをして太陽光に当てる。これがホッケーをした後、何よりも最優先されるリヴァイのルーティンだった。
エルヴィンが車から降りると、ちょうどリヴァイがスプレーをしたものをガレージの外に置いて並べたところで、見る人が見れば分かるレベルで口元に微かに笑みを浮かべ、満足そうな顔で戻って来たところだった。
そしてリヴァイはガレージの隅に山積みになったホッケー用具の数々を見て、ヨシ、と気合を入れるように腰に両手を当てている。今日片付けたいとエルヴィンが話していた古いホッケー用具だ。
「リヴァイ。」
リヴァイが次の作業を始める前に、とエルヴィンはすかさず声を掛けた。
窓から入る風を浴びながらの気持ちいい公園周りのドライブを経て家に着いた今、恐らくリヴァイの頭に車の中で漂った大人な雰囲気は残っていないのかもしれない。
しかしこちらはそういう訳にはいかない。
運転席側のサンバイザーに取り付けてあるガレージ用リモコンのボタンを押してガレージを閉めると、「あ」とリヴァイが非難するような視線を向けてくる。
「おい、道具を外に干してるだろうが。」
「誰も取らないよ。」
するりと背後から腰を抱くと、ぎくりと身体を固くしたリヴァイが顔を赤くして振り返る。もう何度も抱き合っているというのに、リヴァイはスイッチが入るまではいつもこうだ。
次に来る言葉は決まっている。「汗かいたから」だ。
「オイ、エルヴィン、汗かいてるから…。」
「ふはッ、…。」
全く想像した通りの反応で、思わずエルヴィンはリヴァイの腰に手を回したまま肩を震わせて笑った。機嫌を損ねるだろうな、と思って顔を上げると、以外にもリヴァイは下唇を噛んでじとりとこちらを見上げていて、その視線に怒りではない何かを見てエルヴィンはすぐに下半身に熱が集まるのを感じた。
「もしかして、…したい?」
「…当たり前だろうが、車の中であんな話したんだぞ。」
腰にまとわりつくエルヴィンの手を解こうと身を捩りながらも、結局自分の腰をエルヴィンの下半身に押し付けているだけであることに気付いていない。
「ここで、する?」
勝算ありとみて、エルヴィンは吐息を混ぜた声をリヴァイの耳に吹き込んだ。
びくりとリヴァイの全身が震え、リヴァイが突き出した尻を今度は意図的に押し付けて来た。背後から耳元に口づけを落としながら、ふと下半身に手を伸ばすと、リヴァイのハーフパンツの下では既に半分勃ち上がったペニスが布を押し上げていた。
「ずっと考えてた?」
「ッ…何をだよ。勃ってんのはテメェもだろうが。」
「俺はもう完勃ちだ。」
ゴリゴリと押し当てると、エルヴィンのペニスはリヴァイの尻よりも随分上の腰、むしろ背中と呼べそうな部分に当たる。
背後から押し当てられる固いものから逃れるように背を仰け反らせると、その分リヴァイの尻が突き出され、エルヴィンは思わず突き出された腰を掴んで、自らの下半身へ数回音を立てて叩きつけた。
思春期だったらこれだけで射精しただろう。
身長差があるからそそり立ったエルヴィンのペニスがリヴァイの尻に当たることはないのだが、勃ち上がったペニスの裏筋をリヴァイの腰に擦り付けるようにすると、リヴァイは途端に息を詰めて上半身を前かがみに倒した。
「ッちょ、止めろって。」
「尻を突き出してそんなこと言われても。」
「テメェが掴んで揺するからだろうが!」
「そうか、全部俺の所為だな。じゃあそれでいい。」
前に回した手をリヴァイの足の間に入れると、さっきまで中途半端に立ち上がっていたペニスは今やしっかりと上を向いていて、ハーフパンツの上から掴んで擦ると、リヴァイは必死にその手を剥がそうとしながらもがき、しかしそんな反応とは正反対に下半身の力は抜け、次第に閉じようと必死だった両足がだらりと開いてくる。
その内に膝の力も抜けてきて、今やエルヴィンが腕で抱き締めるように腰を持っていないとそのまま座り込んでしまうのではないかという蕩け具合だ。
「ここでするよ。」
刈り上げたうなじを舌で舐め上げると、びくびくとリヴァイが背を仰け反らして震え、舌にザラザラとした感触としょっぱい汗の味が同時に広がった。
「ぅ、アッ…。」
「ほら、もうここで出したいってリヴァイのここは言ってる。」
先端を握り込むと、リヴァイが腕の中で息を詰めるのが分かった。
その時モーションセンサーで点灯していたガレージ内の電灯がふいに切れ、リヴァイがそれに気付いて顔を上げた。
「だ、ダメだ、エルヴィン、ヤルのは良いが、ここは駄目だ。本当に汗臭ぇから、シャワーだけ浴びさせてくれッ…。」
リヴァイが快感と懇願の両方に目を微かに潤ませて振り返る。
怒りの表情ではなく切なげに寄せられた眉が、エルヴィンの欲情を更に煽った。
[[「昨日も何だかんだ言って先に寝ただろう。もう逃がさないよ。」->4-A]]
[[「じゃあ一緒に入ろうか。」->4-B]]
[[「仕方ないな、あんまり長くは待てないぞ。」->4-C]]
(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#edf2ff))「仕方ないな、あんまり長くは待てないぞ。」
あまりにも必死に訴えてくるものだから、エルヴィンは諦めて手を離した。
その前に一度だけ下半身を擦り付けることは忘れなかったが、リヴァイはその動きにすら切なげな息を洩らし、自分で「待て」を出したくせに物足りなさそうな視線を向けてくるのだから困ったものだ。
「早く行け。俺もお前の後にシャワーするから。」
急かすように音を立ててリヴァイの尻を叩くと、リヴァイは頬を赤らめたまま舌打ちを打って、部屋の中に入って行った。
エルヴィンはボトムスの布を押し上げて上を向いたままの自分のペニスを見下ろしてから、これからの情熱的なひと時に必要なものを準備するために自らも家の中へ入った。
家を出る前に既に朝食の片づけは済んでいる。
リヴァイと一緒に住み始めてから、キッチンの流しに汚れたままの食器が残っていることが無くなった。習慣というのは凄いもので、これまでは全く気にならなかったものが、家全体のクリンネスが上昇するだけでエルヴィンまで小さなことが気になるようになってきたのだ。
とは言っても、まだまだリヴァイが眉根を寄せて舌を打ちながら靴下や紙くず、時にキッチンカウンターに置き忘れたスプーンなどを手に睨んでくることもあるが、それでもだいぶマシになったと自負している。
ガレージからランドリールームを経て繋がるキッチンを通り抜け、シャワーの水音が聞こえる廊下を進んで寝室に来た。
ここも朝起きた瞬間にリヴァイがベッドメイクをしてくれるため、今ゲストが泊まりに来ても主寝室を貸し出せそうな雰囲気だ。
薄いブルーで統一された寝具は少し夏っぽいものをと、先週末に二人で買い出しに行って選んだものだ。家の中はセントラルの空調が入っている為年中同じ温度に設定されている。実際に夏物であれ冬物であれそこまで関係はないのだが、インテリアで季節感を出そう細やかに気を回すリヴァイが愛おしくて、エルヴィンは終始にやつきながらインテリアを見て回るリヴァイの後ろを付いて回った。
そう言えば、初めてリヴァイが以前住んでいたコンドに上がった時もランチマットやコースターなどをきちんと敷いて朝食を出してくれたなと思い出す。お互いへの特別な気持ちは感じながらも、まだ距離を測りかねていたあの頃を思って、エルヴィンは思わず笑みを漏らした。
ベッド脇のサイドチェストには読みかけの本が数冊置かれている。
エルヴィンが読んでいる長編小説と、リヴァイが夢中になっている世界の星空を収めた大判の写真集だ。
この写真集を見るとき、リヴァイは1ページ一体何分眺めているんだろうというくらい真剣な眼差しを向ける。いい加減こっちを見てはくれないかと横から視線を向けるエルヴィンなんてそっちのけだ。
だから少しだけ強引に「もう寝よう」と本を閉じさせてしまうことも多い。そんな時「何だ、疲れたのか?」と口元をふわりと緩めてこちらを見るリヴァイが本当に愛おしい。
エルヴィンは積まれた本の下にある引き出しを開け、ローションのボトルとコンドームを取り出した。ベッドの上に放り投げると、先日開けたばかりのローションボトルがベッドに深く沈み、2つの異なるコンドームのパッケージがバラバラに散らばった。
ふと後ろからの人の気配に振り返ると、頭にタオルを被ったまま下着だけの姿のリヴァイが立っていた。
やはり日に焼けてしまったか、もしくは風呂上がりの所為だろうか、それとも…。
「顔、赤いよ。」
ふわりと触れたリヴァイの頬が熱を持っていて、下から見上げられた視線にその赤さの意味を知る。
「…シャワーで抜いたりしてないよな?」
「してねぇ。」
「良い子だ。」
濡れた髪を覆うタオルの上から口づけを落とすと、我が家のシャンプーの香りがする。
リヴァイが自分の生活の一部として溶け込んでいる。そのことを再確認するだけでエルヴィンはいつでも胸が熱くなる。ジワリと込み上げそうになるものを振るい落として、わざと低く落とした声でリヴァイに囁く。
「準備はした?」
額にこめかみに頬にと何度口付けても、シャワーを浴びて汗が気にならなくなったリヴァイは制止しようとはしなかった。
ふと顔を盗み見ると、うっとりと目を閉じて薄く開いた唇から甘い吐息を洩らしている。思わず唇を吊り上げると、途端に何かを察して開いたリヴァイの横にスッと伸びた目が険しくなり、一層に頬を赤らめてそっぽを向く。
「んだよ。」
「何でもない。準備は?」
「…洗ったけど、解してはねぇ。チッ、変な事聞くんじゃねぇよ…。」
「大事なことだよ。」
リヴァイの細い顎の下に手を入れて、少し上を向くように押し上げると、リヴァイは自ら顔を上げて薄く唇を開いた。
唇の奥に赤い舌が見え隠れして、リヴァイが少しだけ爪先立つと同時にその舌先が突き出される。
顎に手を掛けたまま上半身を屈めて唇を追おうと、準備を整えていたリヴァイの舌がするりと口内に入って来て、エルヴィンの舌先を突き、絡め返そうと思えば歯列をなぞって逃げて行く。
こんな風に、唇を合わせた男が過去に何人いるのだろうか。ふとそんなことを思っては、お互い様だと思いながらも複雑な思いが胸に渦巻く。リヴァイの人生の全てを、出来るなら前世も来世も自分の物にしてしまいたいと、そんな風にすら思うのだった。
「ん、お前もシャワー、して来いよ…。」
少しだけ強引に唇を離し、伝った唾液を手の甲で拭いながらリヴァイが呟いた。
下半身を見るとお互い半分ほど勃ち上がった性器がお互いの方を指していた。
[[「あぁ、ローション使って一人で解して待っててくれ。」->4-C-1]]
[[「俺が解すから、何もしないで良い子で待てるな?」->4-C-2]]
(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#fff0f6))「あぁ、ローション使って一人で解して待っててくれ。」
エルヴィンが目でベッドの上のローションを指しながら告げてきた。思わぬ台詞に、は?と間抜けな声が出そうになる。
「エルヴィン、…。」
迷ったように伏せた視線をゆらゆらと揺らしながら、言い淀むようにリヴァイが何度か唇を開いたり閉じたりしていると、覗き込むようにエルヴィンが屈んでこちらをじっと見ているのに気付いた。
「出来る、だろ?」
そんなエルヴィンの物言いに、ほとんど反射的に頷いて、頷いてからまんまと乗せられたようでリヴァイは小さく舌を打った。
「ゆっくりでいいから。すぐに出てくるよ。」
去り際に尻を抱き寄せられて、エルヴィンの大きな手が尻の肉を掴むように食い込んで来た。
「ッあ…。」
布越しに尻を撫でていたかと思うと、突然指を尻たぶの間に指を押し込まれ、先ほどシャワーで洗浄をした時に触れていた感覚が鮮明に蘇る。
背後から尻を押され足が前に出て、リヴァイはエルヴィンの胸板にしがみ付く格好になった。
「リヴァイ、今日は感じてくれそうで嬉しいな。あぁ、それはいつもか。」
頭上から甘く蕩けそうな声が降って来る。
「っせぇな…。」
「解すだけだ。先にイクなよ?」
「分かったから早く行けって!」
出来るだけ凶悪な顔を作って睨み上げたが、エルヴィンは楽しそうに微笑んでいるだけだった。
背中を押すと、ハイハイとエルヴィンが大きな動作で両手を上に上げて部屋を出て行く。
「クソ、何が一人で解せ、だあの野郎。」
誰もいなくなった部屋のドアを少しだけ乱暴に閉め、リヴァイはタオルで髪を少しだけ拭ってからベッドの上を見た。ごろりとローションのボトルが転がって、ゴムが2つ転がっている。
また俺にも付けて「イキ放題コース」とか言い出すつもりだろうか。この前買ったばかりのこのシーツを汚したくないとごねた時にそんなことになった。
もうこれ以上一滴も液体は出ないという所まで搾り取られ、ほぼ気を失うようにして眠ったことしか覚えていない。
「あれは勘弁だな。明日は練習だし…。」
リヴァイは白い個包装のゴムを引き出しに戻してからベッドに上がった。自分で解せと言われても、とリヴァイはローションを取って息を吐いた。エルヴィンの不在時に一人ですることはあっても、すぐ戻って来るであろう相手を待ちながらここで一人でということに抵抗があった。
でも仕方ない。
リヴァイは深く息を吐いてからローションを片手に這うようにして枕元に行き、枕を二つ重ねてその上に浅く背中を預けた。
エルヴィンの事だ、とりあえず形だけでも見せなきゃどうせ生意気に不貞腐れた顔を見せるに違いない。
それに…、とリヴァイは腰を浮かせて下着から足を片方抜いてから自らの下半身に目をやった。
昨日もしようとして疲れて寝落ちたのは自分の方だ、それに自分だって、やりたいかやりたくないかと言えばやりたいのだ。
既にふわりと立ち上がった自らのペニスを見て、リヴァイは心を決めた。エルヴィンのシャワーは速い。洗ったのかどうかも疑わしい速さで出てくるに違いないとリヴァイは手の平にローションをたっぷりと出した。
窪ませた手の平にローションを溜め、その手で直接ペニスを握ってゆっくりと締め付け過ぎない力で上下に擦る。
「ッく…ん…。」
それだけで、半分勃ち上がっていただけのものが一気に上を向き、そのまま最後までペニスを扱いて達してしまいたい欲求が駆け上がって来る。
いやしかしそうではないのだと、左手でペニスを握りながら、リヴァイはローションに濡れた中指を後ろの中心へと伸ばした。
先程シャワーで洗浄をした時に少し入口が柔らかくなったと思ったが、複数の指を深く入れたわけじゃないから既にキュッと固く閉じている。ペニスの根元から流れてくるローションを指で掬いながら中指の腹で円を描くように周囲の筋肉を圧し潰し、少し緩んだ所で第一関節までを埋めた。
入口は良くない、という人も多いがリヴァイは嫌いではなかった。
しかしそれはそこに性感帯があるというよりも、入り口に触れることでこの後奥に訪れる快感に期待をするからと言った方が正しいだろう。指をピンと伸ばしたまま第二間接までを埋めると、既にそこは何かを迎え入れるための器官としての意識を取り戻し、ゆっくりとリヴァイの指を咥えていった。
エルヴィンが部屋に現れた時、リヴァイは既に2本の指を根元まで埋め込んでいた。
背中を預けて浅く腰かけていた体勢はいつの間にか背中をシーツに付けて膝を開いているような格好になり、エルヴィンがベッドに腰かけてベッドが大きく揺れるまで、見られていることにも気付かないほどに没頭していた。
「あッ…!」
ベッドに腰かけたエルヴィンの視線が自分の顔に向いていることに気付いて声を上げたリヴァイに、エルヴィンが小さく首を横に振る。
「気持ち良いんだろう?抜くなよ。」
すぐ横に寄り添うようにベッドに腰かけたエルヴィンが、湿って額に張り付いたリヴァイの髪を撫で上げ、そのまま髪にキスを落とした。
「今何本入ってる?」
今さっき見ただろうが、とは言わなかった。
「に、本…。」
「どうなってる?」
「エルヴィン…。」
勘弁してくれと見上げるも、エルヴィンは唇を少しだけ吊り上げて徹底的に待つ姿勢だ。
「指2本、入ってる…。」
「3本にしてみて。」
「ローション、もっとくれ…。」
手を出したリヴァイの掌に、エルヴィンが追加のローションを絞り出す。
本当に手伝う気はなく、見ているだけのようだ。リヴァイは少しだけ息を吐いてから、立てて開いた足の間に手を入れて、今度は3本の指をゆっくりと順に挿し入れた。
最初こそキツさがあるものの、自分の良いところはそれなりに分かっているつもりだ。
「んぁ、ぁ…!」
ピンポイントで自分がイイと感じるところを擦り上げる。
「可愛いな、リヴァイ、本当に可愛い。」
ふと隣を見ると、エルヴィンもいつの間にか下着から取り出したペニスに手を伸ばしているところだった。
見るたびにそのサイズにぎょっとして、あてがわれる度に「入らねぇ」と思う。
しかし不思議なことにいつも綺麗に収まってしまうのだから人体の神秘ってのは本当にあるんだろうなとリヴァイはどこか冷静に思った。
リヴァイを見るエルヴィンの瞳がどろりと高まる熱に溶け出していて、その熱がまっすぐに自分へ向かって来ているのを感じてはリヴァイの熱までもが上昇し出した。
「おい…。」
「ん?触り合いっこがいいか?」
言いながらリヴァイの下半身に手を伸ばしてくるエルヴィンを身体を捩じって交わし、リヴァイは顎で勃ち上がったエルヴィンのペニスを指した。
「舐めさせろ。」
「えっ、…いいの?」
しゃぶるのが嫌いだと言ったことはない。
だが何故かエルヴィンは時々リヴァにフェラをさせることに戸惑いと見せることがあるのだ。
「俺がしゃぶりてぇ。良いから跨って顔の前にその立派なちんぽ出せ。」
そこまではっきりと告げると、やっとエルヴィンの瞳に欲がはっきりと浮かび、エルヴィンがリヴァイの胸の腹の上に跨った。
「この体勢苦しいだろう、座った方が…。」
「今日は苦しい方が良い気分なんだよ。」
自分の後ろに使おうと、ローションが付いた手で目の前のペニスを握った。それだけで、太く血管すら浮き出たエルヴィンの性器が手の中で大きく揺れた。
ぺろりと先端を舌で舐め上げると、ぷっくりと溢れかけていたカウパーが舌の先端で苦みを出す。
「何だよ、好きなんじゃねぇか…。」
舌で張り出したカリの下に沿うように直径に沿ってぐるりと舌を這わせると、エルヴィンが僅かに腰を突き出して天井を仰いだ。
「あぁ、リヴァイ…。」
「良さそうなのに、俺のフェラじゃ不満か。」
「不満だって?俺がいつそんなことを言った。」
「しなくていいって言う時があるだろうが。さっきだって…」
「それは嫌なんじゃない。」
「じゃあ何だ。」
ペニスの先端に音を立ててキスをしながらエルヴィンの返答を待っている。
口づけを落とす度にエルヴィンのペニスがぶるりと震え、どうしても腹の中で暴れ回るペニスを連想させ生々しい感覚を蘇らせる。
「言ったら怒るだろうから。」
「言わねぇ方が怒る。」
「はぁ…。顔がな。」
「は?」
「…お前、咥えてる時に顔が、その、子どもみたいになる時があるんだよ。」
「…は?」
「だからッ…、あぁもう変態じゃないか。」
顔を覆って天井を仰いだエルヴィンが、リヴァイの腹から降りて隣に胡坐を掻いて座った。エルヴィンの話が的を得ない時は多々あるのだが、今回は本当に何を言っているのか分からない。
怪訝そうに眉を寄せたままエルヴィンを見ていると、顔を覆った手の指の隙間からこちらを覗く青い瞳と視線がかち合った。
「おいおいおいおい、まさかテメェ、ガキにしゃぶらせてるみたいってことか…?」
「いや、そうは言ってないが、まぁ、そういうことだ…。言っておくがそれが嫌とかではなく可愛いと思ってるんだ。ただ可愛いと思うからこそ、何だか違う扉を開けてしまいそうでだな…。」
そこまで言うとエルヴィンは顔を覆ったまま項垂れて、くぐもった消えそうな声で「すまん」とポツリ呟いた。
「まぁ、俺はチビだしな。ガキっぽく見えちまうのは不本意ではあるが仕方ねぇ。」
「何だかイケナイ気持ちになるんだ。お前が丸く大きく口を開けて、その、俺のものを頬張っていると。」
「でも萎えたことねぇよな?」
「は?」
「イケナイ気持ちになりながら俺にしゃぶらせて、お前萎えたことねぇだろうが。」
「だから別に嫌なわけじゃないと言っただろう。」
「じゃあ好きなんじゃねぇか。」
リヴァイはじりじりと四つん這いでエルヴィンに迫り、胡坐を掻いた間からまだ勃ち上がったままのペニスを掴み、先端をぱくりと口に含んだ。
「ッ、リヴァイ…。」
押し返すようにエルヴィンの手が前髪を掴み、それに抵抗するようにリヴァイはグイグイと頭で押して中ほどまでを口に含む。
突っ張る様にしていたエルヴィンの手の力が緩み、頭上で「はぁ…」と吐息が混じったエルヴィンの声がする。
「エルヴィン、やりにくい。立て。」
「あ、あぁ、すまん。」
エルヴィンがベッド脇に立つと、ちょうどベッドの上で四つん這いになった時に目の前に来て咥えやすい。
犬のように両手両膝を付いた状態で、口を開けてペニスの先を追いかける。
「リヴァイ…わざとやってるのか…?」
その様子を少しだけ怒ったように見下ろして、エルヴィンが自ら掴んだペニスに頬を打たれる。
こういう品のない行動をするエルヴィンは嫌いじゃない。
何だ、やっぱり好きなんじゃねぇか、リヴァイは口元を吊り上げて微笑んでから再び口を開き、今度は舌を大きく前に突き出して「あーん」の形を取った。
「…何が欲しいのか言ってごらん。」
「ダディのちんぽから出るミルクが飲みてぇんだ。」
「リヴァイッ…!やめなさい!!」
エルヴィンは怒っているのか笑っているのか、大きく肩を震わせながら両手をベッドについて蹲っている。
「くくくくくッ…!」
言った側からリヴァイも何とも言えない可笑しさが込み上げて、その場に蹲って背を震わせた。
「止めろ、リヴァイ。頼むから俺をそんな危険なプレイに誘わないでくれ。」
「パパの方が良かったか。」
「今は止めてくれ。それは今度で良い。」
「今度やるのか。」
「今はさっきまでのムードが消えてしまう事の方が恐ろしい。」
「ダディでも無くならねぇだろうが。」
「止めなさいと言ったんだ、しつこいぞ。」
太い眉毛が今度はしっかりと寄せられて、リヴァイはそろそろ潮時かと口をつぐんだ。
その時肩が少しだけ乱暴に押され、ベッドに転がったところを後ろから圧し掛かられる。背中一面に密着したエルヴィンの体温と重みに、笑って冷めたかと思った熱が体内で一気に火を噴いた。
「リヴァイ…。」
吐息と共に後ろから耳元で名を呼ばれ、同時に後ろに硬いものが押し当てられる。
「待っ、まだ…」
解し終わってねぇ、と言い切るのを待たずに背後からとてつもない圧迫感が襲って来る。
「ダディの為に解しておけと言っただろう?」
「もッ、それはい、って言ってんだろッあぁっ…!キツ、あっ!!」
「リヴァイ、力抜いてくれっ…。」
「で、ッきるわけねぇだろうが、テメェいきなりッ…!」
「怒鳴ると締まる!怒鳴ると締まるって!」
「クソッ、ど、こまで入った!?」
「何回俺とセックスしてるんだお前は、まだ先が入っただけだッ!」
「何だとッ…!?」
あっという間に腰を掴まれうつ伏せに寝かされ、骨盤の下に枕を2つ突っ込まれた。
エルヴィンの両手に尻たぶを掴まれ、その後開かれる感覚があったと思ったら何を言う間もなく再びエルヴィンのペニスがゆっくりと侵入してきた。
「あ、あ…あっ…無理だッ…!」
「無理じゃないよ。上手に飲み込んでる。分かるか、ここがほら、こんなに伸びて締め上げられそうだ。」
少しだけ息を上げたエルヴィンが、背後で話しながら広がった穴の周りをくるくるとなぞる。その感覚に限界まで広がった自らの穴の様子がはっきりと思い浮かび、リヴァイは退がる様子を見せない侵入物を受け入れる為、シーツに顔を埋めてとにかく深い呼吸を繰り返した。
「ッふ、は、アッ…そこッ、…!」
「ここ?ここが良い?」
「腹がッ…あッ!」
「あぁ、うつ伏せで枕に擦れるのか…悪い子だな、ダディに見えないところで一人で気持ち良くなってたのか。」
少しだけ残った冷静な部分で「まだやる気か」と思いながらも、絶え間なく与えられる快感に頭の螺子が緩くなっていく感覚がある。
結局今日もドロドロにされるのかと思い、リヴァイは早々に飲み込まれることにした。
「ッ、お前が揺すると擦れてっ、あ、ああッ…!」
上から叩きつけるようにして身体を揺すられる度、体内は硬いペニスに抉られ、枕と自分の身体に挟まれた自身のペニスが圧迫されながら擦られる。そして何よりも上から覆いかぶさられたまま揺すられているこの体勢が、リヴァイを何よりも興奮させていた。
エルヴィンに逃げ場を塞がれ、追い詰められて囲われるこの感覚が堪らなく好きだった。
「ひぁッ、あ…!」
じわじわと、でも確実に奥へと押し進んでくる感覚にリヴァイは無意識にシーツを掴んで這い出そうとし、すぐに大きな手に腰を捉えられ連れ戻される。
「逃げるなよ。イイんだろう?」
肩口に歯を立てられて、びくりと身体が跳ねた。
「痕ッ、残るだろうがッ…!」
「嬉しくない?」
「そうじゃなくてッ…あ、奥、過ぎだ…!」
「さっきのもう一回言ってくれ。」
「は、あ、なに…!?」
「ダディのミルクってやつ。」
ずるりと抜けてしまう限界まで引き抜かれ、一気に奥を突かれる。
「ふぁッ!あァっ…!」
「早く。」
一回、二回と突かれる度に一つずつ螺子が飛んでいく。
「あぁ、ダディ、だ、ディッ…!」
生理的に込み上げた涙を溜めて振り返ると、こちらを見下ろしながら腰を振るエルヴィンのシルエットがぼんやりと見えた。
「あぁリヴァイ、本当に何か新しい性癖開きそうだッ、…!何が欲しいか言ってリヴァイ。」
「ミルクッ、ダ、あぁッ…ダディのミルク、出して、出せッ…!あッ!!イク、イクイクッ…!」
リヴァイは後ろからガンガンと全身を揺らされ、そして自らも下半身をベッドに擦り付けながら絶頂した。
この前あんなにも気にした寝具を汚すことなど今日は一秒として考えることはなく、手で擦って最後まで吐き出すのを手伝えない代わりにぶるぶると震わせた腰をベッドに押し付けて圧迫した。
背後でエルヴィンが息を詰めた気配がして、奥深くに性器を埋め込まれたまま今度は突然腰が掴まれ高く上げられる。
限界まで引き抜かれ押し込まれる。再びその動きが激しくなる。まだ絶頂の余韻に痙攣したままの体内が擦られて、リヴァイの目の前がチカチカとスパークした。
「待っ、今イッた、からッ…!」
「知ってる、もう少し、頑張ってッ……!」
腰を掴むその指が骨に食い込んで、少しの痛みを感じながらリヴァイは自らの両膝がベッドから浮いていることに気付いた。僅かに下半身を宙に浮かされた状態で何とか胸をベッドに押し付けて、止めどなく与えられる快感に溺れるように喘ぎ、やがて温かい液体が体内に数回に分けてぶちまけられるのを感じた。
「…あぁ…リヴァイ…。」
息を切らしたエルヴィンが上から覆いかぶさって来て、背中に何度も音を立ててキスをした。
未だ快感を零さず拾おうと夢中な身体が、そのキス一つひとつにすら反応して跳ねた。その反応を楽しんでいるかのような、エルヴィンの微笑みを乗せた吐息が背中にふっと吹きかけられて、口付けられる。
リヴァイはくすぐったさに顔を埋めた。与えられるのは労わるような、煽るような、目的がはっきりとしないはっきりと甘いキスだった。
「…美味しかった?ダディの…」
「止めろ。」
シーツに顔を押し付けたまま告げると、背中に張り付いたままのエルヴィンが身体を揺すって笑ったようだった。
一緒に笑ってしまいそうになるのを堪えられず、リヴァイは汗で張り付いた髪を拭いながら枕を手に取ってエルヴィンの方へ放り投げた。
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(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#fff5f5))「俺が解すから、何もしないで良い子で待てるか?」
そうリヴァイに言い残してシャワーに向かい、シャワーを浴びている間中ずっとペニスは前を向いていた。
流石に上を向くことはなかったが、下着だけを身に着けたリヴァイがベッドで自分を待っているというだけでじわじわと興奮が込み上げてくる。
まだ少し湯気が立ちこもり石鹸の匂いが充満する浴室でシャワーを浴び、スポーツのあとだからリヴァイに「洗ったのか」と言われないようしっかりと頭のてっぺんから爪先までを洗う。
洗いながら、エルヴィンはにやにやと緩む口元を整えることが出来ずにいた。
付き合う前、リヴァイはストレートのエルヴィンがゲイである自分を本気で好きになるはずはないと信じようとはしなかった。
その結果一世一代の「好きだ」という告白も「社会科見学」と呼ばれ、終いには「愛とか恋とか関係ねぇ」と一蹴された。それが原因で怒鳴り合う喧嘩もして、晴れて思いが通じ合ったあともリヴァイは、エルヴィンの恋愛対象が女性だけだったという過去に酷く固執していた。
初めて身体を重ねた日も、快感に喘ぎながらも身体を隠そうとしていたし、終わった後のエルヴィンの反応に「良かった」と心からの安堵に震えていたのを今でも覚えている。
リヴァイが男だとか、ペニスが付いてその下に玉がついているとか、そういう段階は告白した段階で既に突破しているのだ。
そんなエルヴィンにとって、そこにこだわり続けるリヴァイは愛おしくもありながら、時にとてつもないもどかしさを感じさせるのも事実だった。
でも…、と再び緩んだ口元を一人の浴室では隠そうともせずエルヴィンは笑みを漏らした。「俺が解す」と言えば以前は顔を真っ赤にして「ありえねぇ」と眉を寄せていたリヴァイが、今では顔を赤らめながらも若干の期待感をその瞳に乗せて、こくりと頷いてくれるのだ。
「あぁ~~~…。」
項垂れた後頭部に熱いシャワーを浴びながら、エルヴィンは喜びに思わず声を出した。
ツンと澄ましたリヴァイも、カッとなって喧嘩っ早いリヴァイも大好きだ。
ホッケーを始めたのはチームの中でも断トツに遅いのに、今では試合でもエース級に活躍するリヴァイは最高に格好いいし、雑な言葉遣いをしながらも季節に合わせたランチマットやコースターを敷いてテーブルをセットして細やかな生活を送るリヴァイは、後ろからハグして付いて回りたいほど愛らしい。
だが自分の腕の中で羞恥に頬を染めながらも、自分への信頼と快感への期待に身体を預けるリヴァイの素晴らしさは、これまで読んだどんな本に出て来た言葉を以っても表現することはできない。
控えめに言って「最高」。盛らずに言って「宇宙一最高」だ。
エルヴィンが部屋に戻ると、リヴァイは下着姿のままベッドにうつ伏せに寝転んで最近気に入っている星空の写真集のページを捲っていた。
「お待たせ。」
エルヴィンはリヴァイの横に肘を立てて横になり、まっすぐに伸びたリヴァイの腿裏に手を這わせた。少し熱が引いた肌はひんやりとしていて、まだ火照っているエルヴィンの肌に気持ち良い。
顔を寄せて裏腿に口付けるとピクリとリヴァイの筋肉が震え、少し迷ったようにリヴァイの視線がこちらを向いた。
「もしかして、もうそんな気分じゃないとか言わないよな?」
言いながら少し強引に肩を押して身体をひっくり返すと、「あっ」とリヴァイが小さく声を上げて、慌てたようにシーツを掴んで引っ張った。
しかし本のページを押さえていた所為で咄嗟に隠しきれなかった下半身にはしっかりと存在を主張する性器が盛り上がっていて、エルヴィンはそれを見つめたまま思わず笑みを深くした。
「押し付けてオナニーしてた…?」
「し、てねぇよ…。」
「ふぅん…?」
きっとしてないだろうなとは思ったものの、リヴァイのその顔は本当に発火しそうなほどに真っ赤で、何よりもその反応が可愛くて、エルヴィンはリヴァイの顎を掴むとぶつけるようにして口付けた。
一瞬驚いたように目を見開いたリヴァイは、すぐに力を抜いてあっさりを押し倒されサラサラと乾いた黒髪をシーツの上に広げた。
そして「来い」とでも言うように、両手を伸ばしてくるのだから堪らない。
開きっぱなしだった本を閉じて脇へ押しやり、リヴァイの小さな手に頬を挟まれたまま舌を絡め、腰を浮かせたリヴァイから下着を剥ぎ取ると、エルヴィンは迷わずその足の間に顔を埋めた。
「デケェ口」とリヴァイが表現する口を開いて根元を手で押さえたままいきなり全体を咥え込んだ。口の中で風呂上がりのボディーソープの香りが立って鼻に抜け、両膝をだらりと大きく開いたままのリヴァイの様子に、エルヴィンはリヴァイの性器を口に頬張りながら微笑んだ。こちらを覗き見ていたリヴァイと視線が合い、短く息を乱し始めたリヴァイは切なげに眉を寄せて天井を仰いだ。
晒される白い首筋が、何とも艶めかしい。
口の中ではリヴァイのペニスが先端から根元までしっかりと芯を持ち、エルヴィンの上顎を抉る様に反り返っているのが分かる。
一度ペニスを口から抜き、裏筋に唇を押し付けてキスしながら根元までを辿ると、掌で遊ぶように転がしていたものの一つを口に含んだ。
「ッあ、おいッ…!」
握ったままのペニスを少し脇に避けながら擦り、顔を上げたリヴァイに見せるようにして舌先で睾丸を突くと、リヴァイが小さく悲鳴のような声を上げてから身を竦ませた。リヴァイは顔を真っ赤にして羞恥心と格闘しているようではあったが、だらりと開かれた両膝が閉じられる気配はなく、エルヴィンは開いたままのリヴァイの内腿を押さえ付け、更に下へを舌を押し込んだ。
内腿を押さえ付けると身体の柔らかいリヴァイの股関節ががばりと開き、足がシーツに縫い付けられるようにぴったりとベッドに広がった。親指を尻たぶの間に食い込ませ、その隙間に舌を滑り込ませると、舌先に襞になったリヴァイの閉じられた後孔が触れる。
「んっ、ふ…ぁ…。」
舌で入り口をノックするように叩くと、その度にリヴァイの腰が浮き上がる。
「リヴァイ、舐めやすいようにしてくれるか。」
「…は?」
目を潤ませて頬を上気させたリヴァイが、何のことだ、とこちらを見た。
「これ、ぶら下がってて邪魔なんだ。」
「ッふざけんな、テメェ俺に自分のタマ持ってケツ穴晒せって言うのかよ。」
「酷い言い方だな。せっかく人がオブラートに包んだ言い方をしたのに…。」
「同じことだろうが。」
「そうか。じゃあリヴァイ、タマを持って俺が舐めやすいようにケツ穴広げてくれ。」
「ッ…解すって、指で良いだろう…。」
「舐めたいんだよ。ほら早くしてくれ。」
エルヴィンが笑いながらリヴァイの尻を叩くと、リヴァイはぎゅっと下唇を巻き込むようにして噛んでから、膝裏を抱え込むように身体の外側からそろりと両手を伸ばした。
あ、やばい。
そう思ったのはエルヴィンの方だった。
スティックを握ってあんなに激しいスラップショットを打つとは思えない細い指が、さわさわとリヴァイの臀部の上を這い、躊躇いながら尻の中央に辿り着く。
「…美味しそうだリヴァイ、…早く見せて。」
ふと自らの脚の間を見ると、押し当てただけで爆発してしまいそうなほどに膨れ上がった自分の性器があり、エルヴィンは下着の上から「待て」と宥めるように数回上下に撫でた。その様子を見たリヴァイが意を決したように少しだけ息を吸い、震える指で白く滑らかな尻を開いて見せた。
晒された後孔は先程エルヴィンが舐めた唾液に僅かな水気を含んで光り、エルヴィンが食い入るような視線を向ければまるで見られることに喜ぶかのように震えた。
「え、ルヴィン…。」
まるで許しを請うような弱々しい声で、リヴァイに名を呼ばれる。
顔を上げると、もうこちらを伺うことすら出来ないリヴァイが羞恥に悶えながらいつもは涼やかな眉をキュッと寄せて目を伏せていた。
その表情を味わいながら、エルヴィンは舌先をまっすぐに捻じ込んだ。
「ッく、あぁっ…!エルヴィン、中はッ…!」
「中に入れないと解れないだろう。」
リヴァイは身体をビクビクと震わせて、指に力が入っていることで更に舐めやすく後孔を晒していることに気付いていない。エルヴィンはぺろりと舐めて湿らせた親指の腹を、孔と睾丸の間、会陰に滑らせた。
リヴァイは会陰を撫でられるのが大好きだ。初めて身体を合わせた日からそうだった。
「アッ…!!あ、あ…待ッ…!」
反射的に大きく揺れたリヴァイの足を押さえ込んで、エルヴィンはもはやリヴァイの尻を抱え上げるような恰好で、この後自分のペニスを打ち込む奥までもをしゃぶりつくすように舌で愛撫した。
唾液がたらりと伝えば舌先で掬い上げ中に注ぎ込み、その度にリヴァイが声を上げて身体を跳ねさせる。
派手な水音が響き始めたころになると、リヴァイの後孔は緩く開きエルヴィンの吐息が掛かるたびにそれだけでひくひくと震えて反応を見せる。
「…可愛い、…ヒクついてる。」
「言うなッ、あ…!」
舌と一緒に人差し指を深くに埋め込むと、足の間で揺れていたリヴァイの先端からぽたぽたと雫が零れる。
「…イッた?」
「分かん、ねッ…あ…」
「分からないことないだろう?」
「ッいいからいつまでも男のケツ舐めてないでさっさと挿れろよッ…!」
「男でも女でも穴は一緒だよ。」
「そりゃ、ッ良かった…。」
まるで被せるようにリヴァイが吐き捨てた。
「…挿れるわけでもねぇのに、女のケツ舐める男もいるんだな。」
またこの話か、とエルヴィンの眉根が寄った。
「おいリヴァイ、しつこいぞ。」
苛立ちをはっきりと含んだ声に、リヴァイがしまったという風にこちらを見る。
「もうこの話は何度もしただろう。俺にも他の相手がいたし、お前にも他の相手がいた。俺が本来ゲイじゃないことに不安を感じる気持ちは分かろうとすることしかできないが、それは毎日好きだと言い続けて100年後に証明すると約束したはずだ。」
「…お前も、俺の過去に嫉妬するか。」
「当たり前だ。何人の男がこの口が悪くて最高にエッチな唇を塞いだのかってね…。」
エルヴィンは尻を開いたままこちらを見るリヴァイの薄い下唇を親指で捲った。奥から覗いたピンク色の歯茎ときっちりと綺麗に並んだ白い歯をじっくりと見られるのは自分だけの特権でありたいと思う。
このパーソナルな部分をリヴァイが自ら開いて、自分のペニスを咥える様子を想像するだけで堪らなく高揚した。
「それにこっちだって…。」
埋め込んだままだった指の関節を折ると、リヴァイが唇を噛んだまま首を仰け反らせて顎を上げた。
「~~~ッぁ!!」
「…俺がもともとストレートだったとか、女の人が好きだったとか、誰と寝たとか、ましてやその人の何を舐めたかとか…もう関係ないよ、リヴァイ。」
「ッあ、関係、はあッるだろ…。」
「ないんだよ。少なくとも俺には。」
「うっ、ぁあ…!」
リヴァイが好きなところを的確に習って指で小刻みに押し込む。
「お前だってこの声を俺以外の誰に聞かせた?」
「エルヴィ、も、…良いから挿れてくれッ…!」
「そう言って、何人の男に腰を振った?」
指を挿れたまま、直接ボトルからローションをペニスに垂らすと、反り返って上を向いたエルヴィンのペニスを透明の液が上から下へと伝った。
ぬめぬめと先端を光らせながら上を向こうとするペニス押し下げて後孔に押し当てると、それだけでリヴァイの身体が細かく震え、人差し指を引き抜いた時には僅かに開いたままの空間がまるで誘うように蠢いた。
入口に押し当てたまま、リヴァイの上半身をひっくり返し背後から抱いて起こした。これから打ち込まれる期待と緊張に少しだけ固くなった身体を抱き込んで、うなじに口を寄せると綺麗に刈り上げたリヴァイの髪が鼻先でザラついて、耳の後ろを舐め上げると身を捩ってこちらを向いたリヴァイが唇を開いてキスをせがんでくる。
せがまれるまま何度か奥に何かを注ぎ合うようなキスをして、エルヴィンは隙間なくリヴァイの唇を塞いだまま思い切りリヴァイの体内に爆発しそうに膨れ上がったペニスを突き入れた。
「んんん~~~~ッ…!!」
頭を固定したまま唇を塞がれ、リヴァイの叫び声はくぐもった呻きとなり、その代わりに派手に白濁した体液がリヴァイの先端から吹き上がった。
水よりも重みのあるその液体がブルーのシーツの上に点々と染みを作り、唇を解放した後もリヴァイは半開きになった唇の端から唾液を伝わせながらがくがくとその身体を震わせている。
そのままリヴァイを押し倒して身体を再び仰向けにひっくり返すと、何かを悟ったリヴァイが縋るような視線を向けてゆるゆると力なく首を横に振る。
エルヴィンは黙って視線だけを返して、リヴァイのだらりと重くなった両足を肩の上に抱え上げた。腰を掴んで押し込むとリヴァイの腰が綺麗な曲線に反り返る。
「ぁあああッ…!んぁっ、あ…!!」
今度ははっきりとしたリヴァイの声が部屋に響いた。
快感に押し上げられたその声は酷く掠れていて、エルヴィンの腰の奥の方を擦りながら這っていくようだ。
リヴァイの腹の上で、律動に合わせて揺れるペニスの先端からは継続的に精液が漏れ出して、リヴァイの腹筋の窪みに溜まっては横腹を伝って流れて行った。
シーツをピンと張って握り締めながら、リヴァイは必死にエルヴィンと目を合わせようと視線を彷徨わせているが、エルヴィンが強く奥を突く度にその目が時折裏返るようになり、その内にリヴァイはただ大きく胸を上下させながら酸素を取り組むことだけ繰り返すようになった。中で感じながら小さな絶頂を繰り返しているのか、勢いのない射精が続いているようだった。
その小さな収縮に誘われるように、エルヴィンが小さく唸ってリヴァイの体内に欲を放出した時には、リヴァイはぐったりとシーツに沈み込んで、意識があるのかないのかすらはっきりとしない曖昧な視線を宙に泳がせていた。
そしてそのフワフワとした視界に肩で息をするエルヴィン捉えると、リヴァイは汗だくで少しだけ眉を上げ、口角を斜めに吊り上げて見せたのだった。
最後の一滴までを注ぎ込むように、エルヴィンが更に数回小刻みに奥に先端を押し込むと、敏感になった先からびりびりとまるで睾丸まで揺れるような快感が駆け抜けた。
眼下ではぐったりとしたリヴァイが変わらず息を上げていた。
「だけどリヴァイ、…愛したのはお前だけだ。」
ずるりと僅かに硬さが残るペニスを引き抜いて、背後から覆いかぶさるように抱きつくと、リヴァイの身体がぐったりと重く、気を失ってしまったのだと悟った。
この愛おしい恋人は、一体何が不安なんだろうか。
でもその不安もどうしようもないんだとでも言うように困惑しながら向けてくる苛立ちも、何もかもが愛おしいのだからどうしようもない。
「…お前が跪けというなら、俺は灼熱の砂浜の上にだって膝をつくよ。」
鼻先をリヴァイの頭に押し当てるようにして囁いた。
今のリヴァイの耳には届かないだろう。それなのに何故か、リヴァイがふと吐き出した吐息に混ぜて「ん」と腕の中で相槌を打ったようだった。
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(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#f8f0fc))「昨日も何だかんだ言って先に寝ただろう。もう逃がさないよ。」
そう言ったエルヴィンの目は本気だった。
別に怒っているわけでも、言う事を聞かせようと思っているわけでもないのだが、エルヴィンは時々こういう目をする。
エルヴィンの瞳は言葉よりも多くを語ると思う。言葉も多い上に瞳も煩いなんてと思う時もあるが、リヴァイはエルヴィンが喜怒哀楽を青のグラデーションに乗せて語るこの瞳が好きだ。
海の浅瀬のように薄く透き通って見えるときもあれば深海の闇に近い深い青を浮かべることもある。太陽の光を乱反射させて輝く水面の眩しいほどの青になる時もあれば、今のエルヴィンの瞳は言うなれば青い炎だ。熱を感じさせない寒色が、何故かリヴァイの心の奥ですら燃えるように熱く感じる。
そしてこの瞳に見つめられたら最後、リヴァイは沸き上がった言い訳も弱音も何もかもを放り投げて、ただこの男の胸に身を寄せたくなるのだ。
面と向かって「逃がさない」と言われ、リヴァイは早々に逃げようと足掻くことを放棄した。リヴァイの首筋を流れる汗ですら、この男はきっとうまそうに舐めとるのだと知っているからだ。
ふと視線を上げてエルヴィンを見ると、既にリヴァイの降伏を感知したその瞳が、今度はちゃぷんと音を立てて跳ねる水滴のように、喜びと興奮を見せた。
前から両頬を挟まれて、突き出された舌にこじ開けられるようにして口付けられた。まだエンジンの熱を覚まし切らない車に背中を押し付けられて、首筋に噛み付かれる。
「アッ…!」
ピリッと走った痛みに声を上げると、すぐに宥める様な舌が優しく皮膚を舐め上げる。どこか性急な手が勢いよくリヴァイのズボンと下着をまとめて膝まで下ろし、地面に膝をついたエルヴィンが様子を伺うこともなくリヴァイの性器にかぶり付こうと口を開けた。
「ッ待っ、待ってくれッ…!!」
「何だ。」
「しゃぶるのだけは勘弁してくれ。」
「朝起きてシャワーしてただろう。汗なんて気にしなくていい。それに、…良い匂いだ。」
エルヴィンがリヴァイの鼠径部に顔を押し当てて、見せつけるように視線を寄越しながら深く息を吸う。
「ッてめ、…!」
「頼むよリヴァイ、わざわざローションを寝室に取りに行きたくない。」
強引な視線を改め、地面に両膝を付いたまま今度はまるで許しを請うように上目遣いを向けてくる。
「そんな風に見てんじゃねぇよッ…。」
リヴァイは跪いたままのエルヴィンのシャツの胸元を掴んで引き上げた。
「リヴァイっ…?」
されるままに立ち上がり、エルヴィンはリヴァイを間に挟んで車のガラスに両手を付いた。リヴァイがエルヴィンの腰を掴むと、流れを悟ったエルヴィンは短く息を吸った。胸の前で膨らむものが、一層に盛り上がったような気がする。
スポーツウェアのボトムスの中に手を入れて、エルヴィンの性器を取り出すとしっとりと汗をかいたそれはその鼓動すら聞こえるような躍動感を滲ませて反り返っていた。
随分と長さも太さもあるペニスを両手で掴んで押し下げながら、リヴァイはその場に膝をついた。膝をつくとかなり強引にエルヴィンのものを下に向けないと届かない。
でも見上げればこちらを見下ろすエルヴィンの瞳が見えるから、リヴァイはこの体勢で口淫をするのが好きだった。
切なげに寄せられたエルヴィンの眉の下で、欲情に燃える青い瞳がこちらを見下ろしている。リヴァイはその目を見つめながら、突き出した舌の上にエルヴィンの先端をぴたりと置いた。
それだけで、エルヴィンのペニスは期待にぶるりと震え、先端を舌先で突くと苦みが口いっぱいに広がった。溢れ出した唾液を絡ませて、ぴったりと唇を添わせて咥え込んでからしゃぶり上げると、エルヴィンの呼吸がゆっくりと速く熱を含むようになり、車に付いたままのエルヴィンの指先がガラスを擦って音を立てた。
自分がエルヴィンに今快感を与えているのだと思うと、とてつもない幸福感がリヴァイを襲うのだ。
呼吸を司る口を明け渡し、このまま奥まで押し込まれれば酸欠で失神だってするだろう。そんな部分を無防備に曝け出しながら跪いている自分に、そしてそれを見下ろしながら快感に眉を寄せて息を上げる男を見ることに、リヴァイは自分の性器までもが膨れ上がって弾けてしまうのではないかと思った。
舌で裏筋を舐め上げながら、リヴァイは自分の足の間に手を伸ばした。予想していた通りそこはこれ以上どうにもならないくらいに硬くなっていて、指で弾けばその瞬間に達してしまいそうだった。
指で輪を作って上半分を擦るとより絶頂の気配が近付いて、リヴァイは思わず息を詰めた。
「ッんく…!」
「あぁ…、リヴァイしゃぶりながらイクのか?」
リヴァイは口いっぱいにエルヴィンのペニスを頬張りながら、小さく頷いた。
息を切らしたエルヴィンが自分の痴態を見下ろしている。時に淫乱だなと責める様な目で、そして時にそれが嬉しくて堪らないと溢れんばかりの愛情が溢れる目で。
見られていること、そしてそれで良いよと促すように優しい指先で耳元を撫でられて手の中の熱が更に固く膨れ上がった。
ぴったりとエルヴィンのペニスに沿わせていた唇がふわりと開き、口が空っぽになった。
リヴァイは迫りくる絶頂にぎゅっと目を閉じると、強く握って根本から先端までを擦り上げる。
顎の下を突然掴まれたかと思うと、その顎が強く上に向けられて「こっち見て」とどこか切羽詰まったエルヴィンの声が降って来た。
その言葉に反射的に目を開くとリヴァイを見下ろすエルヴィンの青い瞳とかち合って、青い炎がリヴァイの全身を包んで燃え上がったかと思うと、リヴァイは駆け上がって来た熱を自らの手の中に放出させた。
「あっ、はぁ…ン!」
反射的に目を閉じると、掴まれたままの顎が揺すられた。目を閉じるなと言いたいのだろう。目を開けると生理的に込み上げた涙が滲み、エルヴィンが少しだけ笑った気配がした。
「うわぁ、…エッロ…。」
エルヴィンの指に目元が拭われると、頭の上でエルヴィンが唇を舐めながら笑った。
その表情にすら更に追いかけるように先端から体液が溢れ出す。
「んん…、ッふ…。」
呼吸が落ち着くのを待たず、口の中に再びエルヴィンのペニスが押し込まれた。そして口の中で今すぐ爆発しそうなほどに張り詰めているエルヴィンの熱が、今度はゆるゆると動き始めた。
苦しく喉を突くような動き方ではない。ただ、リヴァイの唇がカリに引っかかるまで引き、そして今度は唇を緩めたリヴァイの上顎を擦るようにしてゆっくりと奥に侵入してくる。
太さがあるから唇をぴったりとくっつけるのは簡単だ。だがリヴァイは口を目いっぱい大きく開けて上下の歯が触れないようにしながら、もっと奥に誘って喉をも明け渡すように広げて見せた。
それに気付いたエルヴィンが少しだけ困ったように笑って眉尻を下げる。酷くしたいんじゃないんだと、宥める様な視線だった。
だからリヴァイは頭を突き出した。
まるで酷くしてほしいんだとでも言うように、エルヴィンの腰にしがみ付いて、片手で自らのペニスの先を梳きながら自分の喉の奥深くにエルヴィンの先端を迎え入れる。喉の奥にエルヴィンが触れて、一瞬塞がれた喉が低めに水音を立てる。
「ッハ…り、ヴァイ…。」
切なそうな溜息がエルヴィンの口から洩れ、思わずその声のセクシーさにリヴァイの腰が揺れた。
リヴァイはとうとう自分が出した精液に濡れた手を、そろりと自分の足の間から後ろに伸ばした。
「んん…ッ、…。」
入口に撫でつけた液体の滑りを借りて指を埋め込むと、既に中は燃えるように熱かった。舌の方では自分の体内の熱さに、そして上から降り注ぐエルヴィンの視線は変わらず燃えるように熱く、リヴァイはその両方の熱にドロドロと自分の形が溶け出していくのを感じていた。
自分の輪郭が曖昧なものになり、反比例するように体内に残った感覚だけが研ぎ澄まされていく。
限界まで開いた口の中にエルヴィンがぐいぐいと押し入って、徐々に高まる息苦しさに涙が滲み始める。
それでももっと、と更に奥にエルヴィンの先を迎え入れようとした時、突然口の中からエルヴィンが出て行った。
すぐ隣で後部座席のドアが開かれると同時に二の腕を引かれ、足にズボンを絡ませたまま、車高の高い車に備え付けられたステップの上に立たされる。背中を押され、後部座席に手を付いたその瞬間後ろに燃え上がる熱が押し付けられた。
「ッルヴィン、まだっ…!」
「ゆっくりするっ…!」
言いながら息を詰めたエルヴィンに腰を掴まれたまま強引に先端を埋められる。
「ッあ、あ待っ…!」
慣れ親しんだ感覚とは大きく違っていた。
まだ十分に解れていなかったからかもしれないし、車のステップに乗り上げた格好で、普段は出来ない背後から立ったままの挿入だったからかもしれない。
普段当たらないところをエルヴィンのペニスが抉り、擦りながら奥へ奥へと入って来るその感覚にリヴァイは大きく身体を震わせながら先端から更なる体液を零した。
快感よりも、圧迫感が勝っていた。
とてつもなく大きく熱いものがグイグイと体内に攻め入って来て、まるで喉元まで貫かれそうだと思った。
ゆっくりとすると言ったエルヴィンが耳元で荒い息を上げていて、ゆっくりどころか強引過ぎると感じるほどだった。
苦しくないと言えば嘘だった。
でもリヴァイはエルヴィンが自分に対してここまでの欲を見せていることが嬉しくて、背後から見られないことを良いことに快感に込み上げた涙を拭いはしなかった。
大きなFordがガレージの中でぐらぐらと揺れ、その揺れに合わせてリヴァイが声を上げる。そこにエルヴィンの荒い吐息が被さって、ガレージの中の温度がどんどんと上昇する。
「ッぁ…!?」
突然後ろから後頭部を押され、下半身で繋がったまま後部座席へ押し込まれる。
「ッリヴァイ、…すまない、奥まで行かせてくれ…!」
背中いっぱいにエルヴィンの体温と重さが広がって反射的に全身の筋肉が固くなる。しかし愛した男にここまで求められて誰がNOと言えるだろうか。
何とか肘で身体を支えながら頷くと、肩甲骨の間をぐっと押され、必死に持ち上げていた上半身が座席にべったりとくっついた。
ひんやりとしたレザーのシートの上、上半身が座席の奥へと滑り、気が付いたときには額が反対側の扉へとぶつかっていた。ゴン!と音がするなり、エルヴィンの手が額を覆ってきて「守られている」と感じた瞬間ふわりとリヴァイの身体から力が抜けた。
いつからこれほどまでに人に何かを預けることを良しとしただろうか。
強引に、時に傲慢さすらを滲ませながら固く閉じたリヴァイの警戒心をこじ開けて、突っぱね続けても扉をガタガタと揺すり続けたのはこの男だけだった。
リヴァイが下がれば「行くな」と腕を掴み、「もう立てない」と言えば抱き起こし、立ち止まれば「こっちだ」と手を引く。
そしてリヴァイの身体が、そして心が痛むことのないようにこの男は常に手を差し伸べるのだ。
更に奥に侵入してきたエルヴィンの存在と勢いにもう緊張はしなかった。
代わりに身体が震えたのは歓喜だった。
快感に身体が喜んで、身体の中がエルヴィンで満たされることに心が喜んだのだ。
「ぁああ…ッ、ルヴィンッ…イイ、気持ちイッ…!」
リヴァイのうなじに長めのキスが落とされて、その後はただ耳の側でずっと荒いエルヴィンの息遣いが響いていた。全身の毛穴が開いて、あらゆるものが流れ出てしまうような感覚の中、リヴァイはただエルヴィンにすべてを明け渡して快感に身を任せた。
特に訳もなく手を前に伸ばすと、掌が音を立てて車の窓ガラスを叩き、いつの間にか車内に籠った熱気が、ガラスを薄っすらと曇らせていた。その手を覆うようにエルヴィンの大きな手が重なって、ガラスを擦る音と共に指の後が残った。
反響するかのような二人の吐息と、蒸し上がるような湿度、肌と肌がぶつかり合う音とやけにくっきりと水を含んで響く音が、リヴァイの快感を押し上げては散らせ、
「り、ヴァイッ、…愛、てる…!」
「ナカ、…中だッ…!中に出せッ…!」
気が付いたら叫んでいた。
少し裏返った声は車内で少しだけ反響し、エルヴィンの押し殺した声とリヴァイが挙げた喘ぎに飲み込まれる。
体内で弾けたエルヴィンの熱が、どろどろと臓器に染み渡っていくような感覚にとてつもない満足感が襲ってきては、リヴァイはただ息を上げたまま全身を座席の上に横たわらせた。
「抜くな…まだ…。」
いかないでくれ。
離れていこうとする気配に囁くと、同じように息を切らしたエルヴィンが覆いかぶさって来て、少し強引に首を捩じった形で再び唇が塞がれた。
今度は捻じ込んでくるような勢いはなく、荒ぶった波を小さく小さく沈めていくように、穏やかで甘い口づけが繰り返される。
「こんなに可愛くて、…俺に一体どうしろって言うんだリヴァイ…。」
何度も何度も繰り返される口付けの合間にエルヴィンが笑った。
もう目を開けることも出来ないくらいに身体は疲れていたが、心は変わらずふわふわと水面をスキップするように柔らかく飛び跳ねていて、リヴァイは少しだけ笑った。
もう「可愛いとか言うな」と眉を寄せはしないし、「口が上手い奴め」と勘繰ったりはしない。
エルヴィンが可愛いというのだから、少なくともエルヴィンにとって自分はそういう存在なんだろうと、そう思える自分がいた。
「エルヴィンが言う事を信じる」、その事を何故かとてつもなく正しいと感じていた。
とてつもない睡魔に襲われて、リヴァイは火照った頬をレザーのシートに押し当てながら目を閉じた。
そしてそんなリヴァイの髪を梳くのは、毎日飽きもせず愛を囁く口や目以上におしゃべりなエルヴィンの指だった。
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(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#f3f0ff))「じゃあ一緒に入ろうか。」
そう言ってエルヴィンが後ろから頬に口付けて来た。耳元でチュッと甘いリップ音が響き、その後に唇が掠めていくだけのような短いキスが続く。
「一緒にって…。別に構わねぇけど、風呂ではヤラねぇからな。」
「リヴァイ、そうやって先に先にと選択肢を狭めていくのはお前の悪い癖だぞ。」
「そうかよ。」
「いいか、自分のホームとなるものがあるのは大事だが…」
「また店の開拓の話ならやめてくれ。何だかんだいつも一緒に行ってやってるだろうが。」
エルヴィンは少しだけつまらなそうにリヴァイを見た後、「まぁそれには感謝してるよ」と肩を竦めた。
リヴァイは外食があまり好きではない。外食が決して安くないこの国で、高級レストランでもないのに一人チップを含めればかなりの金額が飛んでいく。
その癖美味しいかどうか食べてみるまで分からなかったり、サービスの質が良くない可能性などを考えると、そもそも外に出て食べに行く価値を見出せないと思うからだ。自分の居心地のいいスペースの中で、美味いと確信が持てるものを、一緒にいて楽しいと知っている人と共にすればよいではないかと思うのだ。
それに対してエルヴィンは積極的に外に出て行く。
どこどこの店が良いらしいと聞けば行きたがるし、同じ店に行っても食べたことのないものを毎回頼んでいるように思う。それが当たる時もあれば外れるときも勿論あるが、その結果にはあまり頓着していないようだった。
新しい世界へ出ること、未知のものに手を出すということ自体を楽しんでいるのだろうと思う。
そんなエルヴィンを眩しく思うと同時に愛おしく思ってはいるが、リヴァイはどちらかというと自分のComfort zoneに留まっている方が安らぐのだ。誘われた時に同行するのは、それがエルヴィンの望みだと分かっているからで自分が楽しむためというよりは、喜ぶエルヴィンを見る為と言った方が正しい。
だからエルヴィンの言っている意味はよく分かる。
分かるがそれとこれとは関係がないだろう。
「どんなファックが好きかってのと、新しい店を開拓する話は関係ねぇだろうが。」
「いーや、ある。」
背後からさわりと腰に大きな掌が這って、少し勃ち上がった性器を避けるようにして内腿が撫でられた。
「きっと、リヴァイも楽しめると思うけどな。」
どうだ?を耳を甘噛みされ、リヴァイは全身の毛穴が開くのを感じた。
「ッ、変な事考えてるならシャワーは別だ。」
振り返りながら睨みつけると、エルヴィンは綺麗に並んだ白い歯を見せて笑いリヴァイの身体を解放した。
「じゃあ冒険は今度にして、今日は一緒にシャワーが良いかな。」
そう言って差し出された大きな手を握り返すと、満足そうに口角を上げたエルヴィンが家の中に向かって歩き出した。
ガレージの中から家に繋がっているドアを入るとまずそこには4畳ほどのランドリールームがあり、ドラム式の洗濯機と乾燥機が2台並んでいる。エルヴィンはそこに入るなり、汗で湿ったシャツと靴下、ハーフパンツを脱いで洗濯機に放り込んだ。つまりこの時点で既に下着姿だ。
更に中に続くドアを開けると、セントラルで冷えた部屋の空気が一斉に火照った身体を包み込んで冷やした。
「先行くぞ。」
言いながら風呂を目指すリヴァイに、冷蔵庫に冷やしておいたスポーツドリンクをボトルから煽るように飲みながらエルヴィンが「ん」と頷いた。
この家はエルヴィンと親父さんが長い間一緒に住んだ家だと聞いている。
築年数が浅いわけではないのだが、きっと細やかに家の手入れをする人だったのだろう。水回りや壁、庭の芝の状態まできちんとメンテナンスが行き届いている。
歴史があって手が掛けられた建築物は不思議と温かみが増すものだ。叔父のケニーに暫く留守をするからお前が住めと半ば押し付けられる形で住んでいたコンドは比較的新しく、どこもかしこも清潔感があり住み心地は良かったが、この家にはあのコンドになかった何かがあり、そしてそれはリヴァイが知らず知らずの内に求め続けて中々手に出来ずにいたものなのかもしれない。
この家にエルヴィンと一緒に住み始めて、日常のふとした時にリヴァイはそんなことを思うのだった。
「どうした?突っ立って。」
気が付くと後ろにエルヴィンが立っていて、リヴァイはタオルクローゼットから取り出した綺麗に三つ折りになったバスタオルを二枚手にしたまま立ち尽くしていたことに気付く。
「…お前の親父さん、会ってみたかったな。」
タオルを置いてからエルヴィンを振り返る。少しだけ唇を吊り上げて、笑みの形を作ったつもりだったがどうだろうか。
エルヴィンはリヴァイを見て、眉尻を少しだけ下げて微笑んだ。
「まぁ、息子がいきなり男連れてくるのは…」
「喜んだよ。」
エルヴィンの優しく、それでいて妙にはっきりとした声が被さった。
背を丸めて脱ごうとしていたTシャツから手を離して、リヴァイが中途半端にそちらを見ると、いつの間にか迫っていたエルヴィンの胸板が目の前に広がっていて、すぐさま覆いかぶさるようにして抱きすくめられた。
「喜んだよ、絶対。」
「…あぁ、…お前の親父さんなら、そうだったかもな。」
エルヴィンが微笑んで、リヴァイのTシャツの裾を掴むとそのまま勢いよく引き上げた。
すっぽりとTシャツを脱がされて乱された髪を手で解すと、額にキスが落とされる。
「下も脱がせて欲しい?」
「自分で脱ぐ。」
「あ、そう。それは残念。」
片方だけ唇の端を持ち上げて、深く口角に影を作ったエルヴィンが、何の躊躇もなくボクサーを脱ぎ捨ててからガラス戸を開けてシャワールームへと消えて行った。
リヴァイが後を追おうとボトムスに手を掛けている間に、扉の向こうから水音が響き出し、あっという間にガラス戸に水滴が飛び散り、曇り出す。
ガラス越しにエルヴィンの大きな肌色の影が動く様子だけが見えて、リヴァイは脱いだ服をバスケットにまとめて放り込んでからガラス戸に手を掛けた。
この家のシャワールームには壁から直接ヘッドが飛び出たシャワーヘッドが一つ、そして壁の反対側には手で取り外しても使うことが出来るシャワーヘッドが付いていた。
朝どうしてもシャワーを浴びたい時間が重なった時にはそれぞれ別のシャワーヘッドを使って二人同時に済ますこともあるが、大抵今エルヴィンが使っているメインのシャワーを使うことが多い。父と息子の二人暮らしの家に、何故これだけのシャワールームが必要だったのかは分からない。
エルヴィンの両親の仲が良かったのかもしれないなと想像して、何故だか込み上げた嬉しさにも似た感情にリヴァイは口元が緩みそうだった。
後ろ手にガラス戸を閉めると、顔面からシャワーを浴びてシャンプーを流していたエルヴィンが手を伸ばして来て、手を引かれるままに身体を寄せると、全裸の腰を抱き寄せられた。まだシャンプーの泡を全身にかぶったようなエルヴィンが、洗い流した金髪をかき上げて、オールバックにした額を露にした。
彫りが深いその顔のパーツはどれも主張が強く、線の細い顔立ちの自分とは正反対だ。リヴァイは思いながら、打ち付ける水滴に目を細めるエルヴィンの顔に目を奪われていた。
「また好きになっちゃった?」
真下から見上げる視線に気づいたエルヴィンにそう言って首を傾げながら微笑まれ、リヴァイは思わず言葉に詰まる。
「そんな、んじゃねぇよ…。」
明らかに頬を染めたそんな強がりも、エルヴィンは笑顔で包み込んでしまう。
「おいで。洗ってあげる。」
手を引かれてシャワーの下に立たされると、向かい合わせに立ちながら上を向かされた。
正面上から伸びて来た大きな手がお湯にしっかりと濡れたリヴァイの髪にシャンプーを落とし、指の腹で地肌を優しく擦られる。
自分の指ではないその感覚に、シャワーのリラックスも相まって全身の力がふわりと抜けるようだった。
「どうですかお客様。」
「あぁ、…悪くねぇ…。」
フワフワに泡立ったシャンプーで包み込むように髪を洗い、生え際は少し力を入れた指の腹が擦っていく。マッサージをするような指の力でこめかみ周辺に触れられた時には全身の毛穴が一斉に開くような快感があった。
「ん、それ…。」
「これ?」
「ん、…気持ち良い。」
「最近寝る前に長い間写真集を見てるだろう。首や頭が凝ってるのかもしれないよ。」
「あぁ……。」
あまりの気持ち良さに目を閉じたまま、リヴァイは意味のある返事は返さずただ相槌を打った。
頭上で息を洩らして微笑む気配がして、今度は頭部を包み込むように大きくマッサージされながら、濡れた額に唇が触れた。
目を閉じたまま顎を上げるとそのキスが瞼、頬骨と降りてきて、リヴァイが薄く唇を開くと同時にぬるりとした舌が滑り込んでくる。
顔面を伝って来たお湯と、エルヴィンの唾液が一緒に溶け込んで来て、いつものキスよりも水音が大きい。啄むように、時に舌を絡めながら口づけを繰り返していると、ちょうどへその辺りに硬いものが突き刺さって、リヴァイは目を閉じて舌先を突き出したまま、その硬いものに手を伸ばした。
両手を縦に並べて握り込んで少しだけ上下に手を動かすと、エルヴィンが鼻先を額に押し付けてきて、ハァ…と吐息を零した。
上を向いたままのリヴァイの髪を撫で付けてシャンプーを流しながら、エルヴィンの両手が肩を掴んだかと思ったら、親指で乳首を掠めながらあっという間に腰まで辿り着く。迷いのない手で尻を掴まれ引き寄せられると、正面から身体がぶつかってリヴァイはハッと息を詰めた。
「ッん、は…ルヴィン…。」
「リヴァイ、…ここでしたい。」
背後でキュッとシャワーを閉める音がして、同時に深く口付けられた。
金色の睫毛に水滴を乗せて、どこか懇願するように見つめられてどうしてNOが言えるだろう。見つめられると全てのNOがYESになる。
リヴァイは上半身を屈めたエルヴィンの首に腕を回して伸び上がり、ふわりと厚い唇を覆うことでYESとした。
◇◇◇
身体が冷えすぎないようにミストを出した浴室内は空気の重さが変わるかのように水気を含み、薄いグレーに黒い線が入ったタイルのフロアには保湿に使うオイルのボトルがキャップの開いた状態で転がっていた。
リヴァイはしっかりと足の指を広げてタイルを掴むようにして力を入れて、息を吐けばすぐにくたりと座り込んでしまいそうになる身体を必死に支え、自らの性器が熱い口内で愛撫される快感に全身を震わせていた。
「ッあ、ッ…も、出るからッ…!」
絶頂への気配が近づく中、腰を引こうとすれば足を投げ出して床に座るエルヴィンに尻を引き戻され、先端がエルヴィンの口内奥深くに誘われる。つるりと滑った手でエルヴィンの頭を掴めば、リヴァイのペニスから口を離したエルヴィンが笑った。
「もっと腰振っても良いんだぞ。」
「も、良いって、言ってるだろうが…。」
息を切らしながら睨んでも、蕩け切った顔では何の凄みもないのだろう。エルヴィンは可笑しそうに笑って、足を跨ぐようにして立っているリヴァイの腿に手を這わせては、鼠径部や内腿に口付ける。優しく尻を撫でまわしていたエルヴィンの指が尻の奥に入り込み、オイルで既に十分解された後孔が期待にぶるりと震えた。
「ほら、準備が出来たら自分で言う約束だ。」
まだか?と意地悪く微笑みながら、エルヴィンが指を数本捻じ込んで来た。さっきまで散々解されたそこはまるで抵抗なくエルヴィンの指を飲み込んで、エルヴィンの指が僅かに曲げられ内壁をノックされる度に体内の全ての器官が喜びに震えるようだった。
「も、い、…い。」
「何だって?」
「も、良いから、挿れたい…。」
その言葉にあっさりと指を引き抜いたエルヴィンが、リヴァイの腰骨を掴むと動作を助けるようにしてゆっくりとリヴァイの身体を押し下げる。
エルヴィンのペニスは手を添える必要もないほどにしっかりと上を向いていて、まるで近づいてくるリヴァイの後孔を確実に突き刺そうとするかのようだった。
膝を立てて足を開いたまま、しゃがみ込むようにして腰を下ろすと、既に震えだしていた膝が意に反して揺れ、エルヴィンが痛いほどの力で腰を掴んだ。
「そのまま膝、立てて開いてて…。」
情欲に温度が上がったエルヴィンの声が僅かに掠れている。
エルヴィンの先端が入口に触れた。それだけで、まるで粗相をしたかのようにぽたぽたとリヴァイの先端から体液が溢れた。
「っふ…あぁ…」
エルヴィンの肩に手を付いて、ゆっくりとエルヴィンのペニスが体内に押し入って来る。
カリが埋まったあたりから、既にリヴァイは自分で自分の体重を支えることすら出来ず、縋りつくように手を置いたエルヴィンの二の腕の筋肉が固くなって、その腕に全身を支えられていることを悟った。
今手を離されたら、きっと自分の身体は垂直に下に崩れ、既に先端をしっかりと埋め込まれた体内は一瞬で貫かれてしまうのだろう。
そんなことになったら、きっと自分の身体は壊れてしまうだろうと思った。
そしてそう思った瞬間、腰を掴んでいたエルヴィンの手が緩み、瞬間的な浮遊感を感じた。緩んだのではなかった、滑ったのだ。
一瞬にして支えを失くしたリヴァイの身体が重力のままに下に崩れ、エルヴィンのペニスが一気に最奥を打った。
「ぁあああ——ッ!!」
「ッう…!」
目の前が暗転してその後その暗闇にチカチカと光が散った。
下半身に熱が溢れたと思ったが、それは勢いよく吹き出した自らの精液だった。
言われた通りに開いて立てていた膝を反射的に胸元に引き寄せて、しかしその体勢を保つ筋力も一瞬で消えてしまい、リヴァイはエルヴィンの上にぺたりと座り込んだまま、上半身がぐらりと後ろに傾くのを感じた。
バランスを失った身体が、まるで宙に投げ出されたようにぐらりと揺れて、しかしすぐに熱い身体に抱きすくめられ、目を開けると視界はミストが舞って少し曇った浴室の天井が見えた。
「リヴァイ、シャワーだから…もっと出して。」
強すぎた快感に麻痺したような下半身に再び快感が蘇る。
最奥を塞いだままだったエルヴィンのペニスがゆっくりと律動を始めたのだ。
「ッ無理、だ、エルヴィン…変になっちまうッ…!」
縋るように伸ばした手は掴まれて浴室の床に押し当てられた。
ずるりと長いものが引き抜かれる感覚に皮膚の表面を駆け上がる快感があり、押し込まれるときには内臓が痙攣するような快感がある。リヴァイが首を仰け反らせながら、大きく頭を左右に振ると、水気を含んだ髪が自らの顔を打ち付けて水滴が飛び散った。
「俺を見て、リヴァイ…。」
必死に目を開けて目の前の男を見ると、ミストで濡れた天井から大きな雫が落ちてきて、リヴァイの目に滑り込み、反射的に目を閉じるとそれが涙のように目尻から流れ落ちた。
再びエルヴィンの姿を探すと、大きくぼやけた影が笑っていて、リヴァイは受け取り切れないくらいの快感と胸を埋め尽くす愛情にぎこちない笑みを返した。
少し手を動かすとそれに気付いたエルヴィンが拘束を緩め、リヴァイは酷く怠く重い腕を何とか持ち上げてエルヴィンの唇に手を伸ばした。
リヴァイに「好きだ」と告げる唇、「愛してる」と告げる唇、そして心を喜びで満たし終いには溢れさせるようなキスをする唇だ。
親指の腹で下唇を圧し潰すと、エルヴィンは動きを止めて伺うようにして青い瞳がリヴァイを見た。水で濡れた青い瞳に映り込んだ自分自身を見て、リヴァイは何か熱いものが込み上げて、何故だか無性に泣きたくなってぎゅっと目を閉じた。
「リヴァイ…。」
きつく寄せた眉根と瞼の上に連続してキスが落とされて、エルヴィンが何かを囁いた。吐息に滲んだその言葉が聞き取れず、リヴァイがゆっくり目を開けると、普段は頑固さすら滲む太い眉毛の端を八の字に下げ、エルヴィンが泣きそうな顔で笑っていた。泣いているかもしれないとすら思った。
「俺もだ、リヴァイ。…愛してるんだ。」
何故伝わるのだろうか。
何故掬い上げてくれるのだろうか。
何故…
「何で俺をッ…?」
愛してくれるのだろうか。
「んッぁあ…!アッ…!」
返事の代わりに、再び抉る様に体内に性器を押し込まれ脳の奥の方で衝撃が迸った。
何度も何度も引いては押し込まれ、その度にびくりと跳ねるように震える全身は、その内にただ揺さぶられるだけになり、床に頭を打ち付けないようにエルヴィンの大きな手に守られながら、閉じる事すら忘れた唇からは普段は恥じて隠したくなるような声が止めどなく溢れていた。
浴室内のガラスに反響するように響いた喘ぎ声は、その内に「ア」の音を繰り返すだけの音を伴った息となり、固くなって腹の上で揺れるリヴァイのペニスが掴まれた時も、ハッと息を呑んだだけだった。
「ッ出る、ッう、出るッ…!」
「もっと出せリヴァイ。全部だ、全部出すまで終わらせないッ…。」
まるで下から内臓を突き上げるような激しすぎる快感と、絶頂を促す明確な意図を持って擦られる外部からの愛撫に、本当に全部が出てしまいそうだった。
腹の奥の方の、一点にエルヴィンの先端が埋まるような感覚があり、まるで感電するかのように背中が反り返った。
「~~ッッッ!!ッぁ、く!」
その一点にグイグイと先端を押し込まれながら身体の中心を擦り上げられ、最後は悲鳴も何もかもを飲み込むしかなかった。
だから悲鳴以外のものは全部出てしまった。
体内が空っぽになるのと、胸や腹に熱い何かが撒き散ったのがほぼ同時だった。
ぬるま湯のようなサラサラの液体が胸元辺りまで勢いよく飛び散ったかと思うと、呻くように息を詰めたエルヴィンの精液がまた別の温度を持って腹の上に出され、リヴァイは胸を上下させてぐったりと息をしながら、外に出したのか、とそんなことを思った。
数分ほど、ただ二人で息を上げて固まっていた。その一秒一秒がただ無性に愛おしかった。
焦点を定められずにいたリヴァイの視線がエルヴィンの青い光を見つけ、互いの視線がそこで止まった。
「リヴァイ…たくさん出…」
「言ったら殴るッ…。」
フフと息を洩らして笑いながら、エルヴィンがリヴァイの頬にキスを落として立ち上がると、使っていなかった方のシャワーヘッドから水を出した。すぐにお湯が出始めて温度を確認するようにエルヴィンが手をかざしている。
「眠たい?綺麗にしたらベッドに連れて行くよ。」
目を閉じて目元を覆うように腕を乗せているとエルヴィンの甘い声が水音に乗って降って来て、どこまでも甘い男だなとリヴァイは唇を笑みの形に引き伸ばした。それを見たエルヴィンが「ん?」とこれまた甘い音を投げかけてくる。
エルヴィンはリヴァイの身体の近くまでシャワーヘッドを伸ばしてきて、少しだけ熱めのお湯がリヴァイの身体を覆っては流れていく。
こんな風に身体を洗われるなんてと思わなくもなかったが、身体はまるで磁石で床にくっついたかのように指一本動かせず、リヴァイは黙って浴室の床に転がっていた。
ふと馴染んだボディソープの香りがして、エルヴィンの掌が身体中を這い回り出す。
しかしその手は再び快感を呼び起こすことがないよう意図してあっさりとした事務的な動きで、名残惜しいほどあっさりとリヴァイの身体を離れて行った。目元を覆ったままの腕の下からその手を見ていると、口元だけ見えるエルヴィンの唇が深く笑みの形に動いた。
「今は洗うだけ、ね。」
何もかもお見通しか、といっそ笑いが込み上げてリヴァイは顔を覆ったままそっぽを向いた。
再び全身に注がれる温かいお湯が、時にリヴァイを不安にさせるあらゆるものを溶かしては流していくようで、ぬくもりに解けたのは披露した筋肉ではなく心かもしれないと思った。
きっとエルヴィンも笑っているだろうと腕を上げてその顔を見ると、キラキラとした愛情を溢れんばかりに携えた青い瞳が微笑みの形に細められてこちらを見ていた。そして、まるで俺も一緒だよ、とでも言うように、エルヴィンは微かに一回頷いたのだった。
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(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#fff5f5))「よし、これだな…。」
陽が沈み始め少しだけ気温が下がり、外にいても汗が滲むことはなくなった。
燃え上がるように体温を交わし、疲れ果てた身体をぴったりとくっつけて休ませてから、エルヴィンとリヴァイは扉を開いたガレージの中に立っていた。
ガレージの角に積まれた山を見て、エルヴィンがどこかワクワクとしたように声を弾ませた。
「本当に今日中に終わるのかこれ。」
リヴァイがガレージの外に干していたホッケー用具を取り込んで、匂いを確かめるように少しだけ鼻を寄せた。
「臭い?」
「まぁ多少はな…。」
それより、と手にしていた用具を所定の場所に片付けて、リヴァイがすっと寄り添うように隣に身体を付けて来た。
「良いのか、本当に寄付なんかしちまって。親父さんとの思い出でもあるんだろう。」
今二人の前の前に積まれたホッケー用具は、エルヴィンが子どもの頃から使っていたもの方大学で使っていたものまでさまざまだった。
その種類もアイス、インライン両方のスケート靴から子ども用のヘルメット、木製で印刷の剥げ掛けたリヴァイにも短いスティック、そして削れて塗装の剥げたシンガードとあらゆるものが揃っていた。
「誰も使わないなら、使ってもらった方が良いよ。もうずっと、こうやって隅に置いて触れずにいたんだ。」
「…それを何で今?」
エルヴィンは、ちらりとリヴァイへ視線を向けてから、懐かしそうな笑みを浮かべて近くにあったシンガードを手に取った。接着のベルクロはくたりとヘタってゴムの部分も伸び切って縁がフリルのようになっている。ホッケーの用具はそろえるとかなりの値段がする上に、子どもの内はすぐにサイズが合わずに買い替えることも多い。中古品でも寄付すれば喜ぶ子どもたちが大勢いるだろう。
「寄付できるものを寄付して使ってもらって、使えない物は処分するよ。」
「…スペースを作れば全部置いとけなくはないだろう。その辺のレンタルガレージを借りたって良いんだぞ。」
何だかエルヴィンが自分の意思に反して無理やり道具を片付けようとしているのではないかと、リヴァイはそんな気がしてあまり乗り気がしていなかったのだ。エルヴィンの父と会ったことのないリヴァイでも、エルヴィンの言葉や態度の節々に密接な親子関係を思い描くことが出来る。たった一人の肉親を亡くしたエルヴィンの喪失はいかほどかと、リヴァイは随分と昔に失った自らの母の面影を思い出していた。
残念ながらリヴァイの手元に母の物はほとんど残っていない。何かないと生きていけないわけでも、何もいらないとそう思う訳でもない。でも思い出がこのように山のように残っているのなら、それをあえて遠ざける必要はないのではないかと思うのだ。
「お前に渡したいものがあるんだ。」
エルヴィンは手にしていたシンガードを差し出した。
「これか?」
「はは、まさか。…この中にあるはずだから、一緒に探すのを手伝ってくれるか。」
やけに真っ直ぐな目に見つめられて、リヴァイは「もともとそういう約束だからな」と頷いた。エルヴィンが笑みを返してガレージの壁に掛けて収納してある折りたたみのビーチチェアを下ろして広げた。
「よし、やるならさっさとやるぞ。椅子になんか座ってる間はねぇぞ。」
「腰、痛くない?」
「うるせぇぞ。手伝わなくていいなら俺は寝る。」
「いや、手伝ってくれ。頼む。」
事後特有の腰の痛怠さと、これまた特有の中側の腫れたような不思議な感覚にリヴァイは腰に手を当てて軽くストレッチをしてから足元のヘルメットに手を掛けた。
「寄付できるものはこっち。残念だが寄付できそうにないものはこっちだ。いいな。」
「Yes, Sir.」
エルヴィンが口元に深い笑みを浮かべながら、敬礼をするように額に揃えた人差し指を中指を当てた。
手にしたヘルメットの状態を手の中でくるりを確認して、ボタンがしっかりと嵌まることを確認してリヴァイは「寄付」の方へ置いた。エルヴィンはビーチチェアに腰かけたまま小さな子ども用のグローブを手にして、掌の大きく破れた部分に指を通しては眉尻を下げて微笑んでいた。
「お前にもそんな手の小さい時があったんだな。」
「ん?俺の初めてのグローブだ。穴が空いてなかったら誰かに使って貰いたかったけどな。」
エルヴィンはそんな風に言いながら「処分」の方へそのグローブをそっと置き、次のニーパッドを手に取りながらも暫くの間そのグローブを見つめていた。
「無理して片付けなくても良いんじゃないのか」と喉元まで出かけた言葉を飲み込んで、リヴァイは次に手に取ったまだ真新しいスティックを眺めた。
「何だ、ほとんど使ってねぇじゃねぇか。寄付どころか売れそうだぞ。」
「あぁ、それ11歳の誕生日プレゼントだったんだ。新品のスティックが欲しいってかなり長い間強請ったんだけど、買って貰ったら貰ったで、傷を付けたり折ってしまうのが怖くて結局ほとんど使わなかった。」
どうする?という意味を込めてエルヴィンを見ると、エルヴィンは「寄付だ」と顎を上げた。
そんな風に暫くの間ガレージの中で「寄付」「処分」と仕分けが進んでいった。時々エルヴィンの思い出話を聞きながら、そして顔を上げれば犬を連れて近所を散歩する人に手を振って挨拶を交わしながら、一つの大きな山になっていたものが、綺麗に2つの山へと分けられていった。
燃えるようなオレンジだった夕焼けが、少しずつ色の明るさを落ち着かせていく。
気が付けば残ったものは床に寝かせて置かれていた長さの違うスティックが数本だけだった。
「あとはこれだけだな。集中してやれば…エルヴィン?」
振り返ったエルヴィンは、ビーチチェアに腰かけたまま手を組んで前屈みになり、じっとその数本のスティックを見つめていた。
疲れたような表情ではない。かといって、いつもの眩しいほどの笑顔があるわけでもなく、ただじっと、数本のスティックを見つめているのだ。
伏し目がちになった瞳に、ぎっしりと密に生えた深い金色の睫毛が影を作り、どこか憂いすら感じる表情だった。
リヴァイは「寄付」と「処分」の二つの山に分けた用具を見た。
まだ比較的新しく、あっという間に大きくなって使えなくなったのだろうと思うキッズサイズの物、買ってもらったのに壊すのが怖くて使えなかったユースサイズの物。そして激しい練習に使われたことが想像できる、ほとんど今使っているものとサイズの変わらない物。
エルヴィンは今日、リヴァイの知り得ないエルヴィンの人生の一部を少しずつ切り取って、まるで広げた両手にそっと乗せるようにして見せてくれた。
エルヴィンの一部を知ったことに喜びを感じると同時に、どうやっても知り得ない人生の広さと深さを知りもしたようで、リヴァイはそのエルヴィンの表情に何とも言葉に出来ない複雑な感情を感じていた。
ぎし、と音を立ててエルヴィンが腰を上げ、残った3本のスティックの内、黒い長めのスティックを「寄付」の方へ置いた後、『X』に重なって残った木製の短いスティックの両方を手に取った。
背の高いエルヴィンが持つと酷く短く感じるそのスティックは、リヴァイの目から見ても明らかにキッズサイズだろうと思った。
エルヴィンが手の中でスティックを裏返しては、何かを探すように取っ手に目を走らせている。
リヴァイがその様子を黙って見ていると、ふと顔を上げたエルヴィンが一本のスティックを寄越した。
「それは寄付の方へ。」
「あぁ…。」
リヴァイがスティックを積まれた用具の脇に立てかけると、手に残った一本のスティックを持ったままエルヴィンがリヴァイの方を向いていた。
「…それか、探してたのは。」
「あぁ。」
「…お前がガキの頃のスティックか。」
「…あぁ。…リヴァイ、これをお前に渡したかった。」
そう言ってエルヴィンは再びビーチチェアに腰を下ろし、リヴァイにも座れというような視線を向ける。リヴァイは促されるまま腰を下ろし、スティックを手に柄を見つめたままのエルヴィンを見た。
いつの間にかすっかり太陽が沈んだ空は夕焼けの余韻を住宅街の奥に僅かに残して、その空の大半は再び寒色の彩へと姿を変えていた。
家々の明かりが点き、薄手のカーテンやブラインド越しに人々の生活が漏れ出る灯と共に姿を現す。
「リヴァイ。」
ふと名を呼ばれてエルヴィンを見ると、エルヴィンがスティックを差し出していた。
いくら身長が低いとは、このスティックはリヴァイが使うものよりも幾分も長い。エルヴィンの意図を測りかねて、でもそれでもリヴァイは差し出されたスティックを手に取った。
木製のそれは普段リヴァイが使うカーボン製の物よりもしっかりと重く、木面は荒れることもなく滑らかだった。
「このスティックを使っていたころ、俺は母親のいない生活に酷く孤独を感じていたんだ。ずっと父さんと二人だったから、それが当たり前だと思ってはいたけどふとした時に、…あぁ、今ここにいてくれたらって。」
センサーに反応してガレージ外の電灯にフッと白い光が灯り、同時にガレージの中の壁に埋め込まれた湯を沸かすモーターが静かに音を立てた。
「何ていう理由もなく塞ぎこんでた俺に、父さんがそのスティックをくれたんだ。」
「…これも、ほとんど使ってねぇな。」
「あぁ。お守りみたいなものだったから。」
「お守り?」
怪訝そうに眉を寄せたリヴァイに向かって、エルヴィンが穏やかな笑みを向ける。
「取っ手のテープ、剥いでみて。」
言われて視線を落とすと、取っ手には赤いテープが巻かれていて、その端が垂れ下がって剥がれかけていた。
剥がすと汚くなるのではないかと思いながら、リヴァイは端を掴んでくるくるとテープを巻き取った。
簡単に剥がれるところもあれば、ところどころ接着面がくっついて白く糸を引くところもあるようだった。リヴァイは出来るだけ跡が残らないように、丁寧にテープを捲っていった。
すると黒いマジックで、木面に直接書かれた文字が姿を現した。
最初は “S”で、単純に “SMITH”だろうかと思ったが、次の文字は “M”ではなく “T”だった。伺うようにエルヴィンを見ると、エルヴィンは片肘を膝につき、その上に顎を乗せて唇を笑みの形に引き伸ばしながら、先を促すように両眉を上げて見せた。
それなら、と少し勢いよくテープを巻き取ると、そこに書かれていた文字の全てが表れた。手に巻きとるようにしてテープを剥いだため、リヴァイの右手には弱い接着力を残したホッケーテープがぐるぐると巻き付いている。
『Stick together and we’ll be alright』(一緒にいれば大丈夫だ)
スティックの柄には、黒マーカーでそう書かれていた。
「…親父さんの字か?」
意志の強さをそのまま文字に乗せたような、エルヴィンの流れるようでいながらもところどころが角ばった文字とは少しだけ違った。
エルヴィンは頷いた。
リヴァイは伸ばされたエルヴィンの手に、スティックを乗せた。
「時には寂しくなったり、苦しいことがあったり、何かに負けそうになったり。…だけど、父さんと俺と、一緒にいれば、一緒にいて支え合って生きて行ければ大丈夫だって、そう言って父さんが書いてくれた。 “stick”にかけた中々面白いジョークだろう?」
エルヴィンはそう言って、テープの下でしっかりと濃く残った文字を指でなぞった。
「…リヴァイ、お前と出会って、色々あって今こうやって毎日を共にするようになって、…俺は初めてこの意味を理解したように思うんだ。」
「Stick together and we’ll be alright…って?」
「あぁ、勘違いしないでくれよ。お前にダディを求めてるわけじゃない。」
エルヴィンは恥ずかしそうな笑みを見せると、椅子から身を乗り出してリヴァイの頬へ口付け、それからリヴァイの頭を抱き寄せるようにして額同士をコツンと合わせた。
じんわりと、触れ合ったところからエルヴィンの体温が流れ込んで来て、心地よさに目を閉じると、お互いの体温が混ざり合ってまるで一つになるようだった。
「リヴァイ…、一緒にいようよ。」
目を開けるとすぐ側には大空と海を混ぜたような色が広がっていて、この地球に空と海が存在するように、自分の人生にエルヴィンがいることがこれ以上なく正しい事のように思えた。
「俺たちも、一緒にいよう…?」
額を押し付け合ったまま、エルヴィンが首を傾げるようにしてリヴァイの瞳を覗き込む。
「いつまで…?」
「お前が飽きるまで。」
「…俺が飽きなかったら…?」
「そしたらずっと。お前が不機嫌なおじさんになっても、俺が美味しい紅茶を買ってきて機嫌を取るよ。…二人ともホッケー出来ないくらいおじいさんになっても、あの池の周りを手を繋いで散歩しよう。」
「うん」と、ただ一言の相槌が出てこなかった。
驚きや感動や喜びや不安や、名前を持つあらゆる種類の感情が、まるでリヴァイの喉元を隙間なく埋めてしまったようだった。
息が詰まって、声帯が少しだけ震えて、やっぱりそれでも言葉は出なかった。
「好きだよ、リヴァイ。」
「お前はただ、頷いてくれればそれでいい」と、かつてエルヴィンはリヴァイにそう言った。あの時は信じたいと願いながらもエルヴィンの気持ちをまだ疑って、エルヴィンが目の前に差し出してくれる未来の約束に答えを返せずにいた。
「ッ…エルヴィン…。」
真っ直ぐにこちらを見つめるエルヴィンの誠実さを、愛情の深さを、そして存在そのものを何よりも、いっそ狂おしいほどに愛おしく思っている。
そして、今この時にも微かに唇を震わすことしかできないリヴァイの不器用さを包む空気のなんと優しいことだろうか。
気が付いたらリヴァイは両手をエルヴィンに伸ばしていた。
しかしむしろ向こうから迎えに来るように迫って来た厚い胸板と太い腕に包み込まれ、まるでこのままエルヴィンの身体に吸収されて一つの塊になってしまうような感覚に、確かにリヴァイの心は喜んで震えたのだった。
「エルヴィン…、あぁ、…ずっとッ…。」
——「ずっと好きだった」
——「ずっと好きだよ」
——「ずっと一緒に」
続かなかったリヴァイの言葉を、エルヴィンはやっぱりいつものように大事そうに大きな掌で掬って陽だまりのような笑みに変えた。
いつもよりも深く抱き込むように守られて、その「ずっと」の意味をリヴァイは何度も何度も頭の中で反芻しては、そこにはもう「優しいもの」しかないのだと、エルヴィンの胸の中でゆったりと息を吐いた。
更にきつく抱き締められようものならリヴァイの中には愛が満ち溢れすぎてしまうだろう。
そしてきっともう、…息だって出来ない。
『Stick Together』
——END
(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#e3fafc))(enchant:?page,(text-colour:black)+(bg:#e6fcf5))
''『Stick Together』''
エルヴィンが小さい振り幅で素早くスティックを振って昨日巻いたばかりの鮮やかな紫色のテープで黒いパックを打った。
爪先を内に入れたバックスケーティングでディフェンスの形を取っていたリヴァイの足の間を、フェイントで数回左右に揺らされたパックがすっとくぐりぬけて行った。
「っ?!」
その場で片足を後ろに引いてコンパクトにターンして、テープが剥げ掛けた自分のスティックを伸ばすが、その下にエルヴィンのスティックが差し込まれるとリヴァイが腕に力を入れて押し返す間もなく、下から強い力で跳ね上げられる。
ふわりと浮いたリヴァイのスティックの下を通って、エルヴィンが攫うようにして黒いパックを奪っていった。
"Later!"(またね)とすれ違いざまにエルヴィンが唇の端を持ち上げて笑い、ふわりといつものよく知った香りと汗の匂いを残して脇を駆け抜けていく。ヘルメットを付けていない汗で毛先が束になった金髪が、真っ白なリンクの上、太陽の光に輝いて舞った。
エルヴィンはホッケーをするにふさわしい恵まれた体格の象徴でもある大きな背中を見せながら、大きなストライドでゴールに向かって一直線にリンクを滑り抜けて行く。
動きは大きいのにスティックでパックを弾くスキルはとても細やかだ。リンクの上を走り回りながら身体の前で右に左にとパックを動かすエルヴィンのスティック捌きを見るのがリヴァイは大好きだった。
誘うようにリヴァイの方へパックを寄せては反対に弾き、ちらりと後ろを見る口元には大きな笑みが浮かんでいる。
ハーフリンクであれば間に合わなかったかもしれないが、フルリンクならまだ追いつける。リヴァイはその確信の元、リンクを蹴って更に加速した。
最近新調したスケートのウィールの調子がすこぶるいい。
エルヴィンは横滑りがし過ぎるのではないかと言っていたが、リヴァイは軽く横に滑りすぎる方が好みに合っているのだ。細やかにターンが効くウィールはスピードと隙間に捻じ込んでいくように自分のプレイスタイルに合っていると思う。
目の前にエルヴィンの大きな背中を捉え、思わず笑みを浮かべそうになったその時、すぐ前のエルヴィンが急にスピードを落とすと片足を前に浮かしながらくるりとこちらを向いた。
「あぁ?何だよ。」
良いところだったのに、と言いかけたリヴァイの顔をエルヴィンがじっと見つめ、そして僅かに眉を寄せた。
「今日はもうおしまいだ。」
「は?」
剣呑な表情を返すリヴァイにお構いなしのエルヴィンは手を額に翳して空を見上げた後、さっさとパックをリンクの入口の方へ打って流した。
「ほら、行くぞ。」
「何なんだテメェはいきなり。勝ち逃げじゃねぇかよ。」
「何とでも言ってくれ。」
スティックを脇に抱えて早々にグローブを外し、エルヴィンが汗の流れる髪をかき上げた。髪の生え際が少し角ばったような印象の額が一瞬露になり、少し間を置いてからパラパラと零れて来た前髪が被さった。
「おい、ふざけるな。俺はまだっ...」
「顔が真っ赤だよ、リヴァイ。もう2時間もプレーしてる。これからも気温は上がるだろうし、今日はこれで切り上げよう。」
エルヴィンはリンクのゲートを開けると、よいしょと跨ぎながら少しだけ困ったように眉尻を下げてこちらを振り返った。
そのままドサッとベンチに腰かけて、あっという間にスケートの紐に指を掛けている。2人きりでの遊び半分のプレーだけだからヘルメットも上半身のパッドすらも付けていない。
納得がいかないと腕を組んでリンクの中からエルヴィンを見ていると、それに気付いたエルヴィンがベンチの横をポンポンと叩いた。
「リヴァイ、早くおいで。」
リヴァイはその言葉と動作に弱い。
勿論、エルヴィンはそれを知っていてやっているに違いない。息を吐いてゲートを跨いだリヴァイにエルヴィンが満足そうに笑みを見せた。
「スケートどうだ。」
「問題ねぇ。滑りすぎるなんてことはない。」
「そうか、横滑りでの転倒は足首や膝だけじゃなく、手を付いた時に手首や肘痛める可能性が高いから気を付けないと危ないんだぞ。」
エルヴィンがスケートから足を引き抜いてスニーカーに履き替えている。
このウィールが小包で届いた時にもその話は聞いていたし、ガレージで取り替えた時にも言っていた。
何なら今日リンクについてリヴァイがスケートを履いている時にも言っていた。
悪気はなく、全て自分の怪我を心配してのことだと分かっているから黙っていたが、いい加減鬱陶しい。しかし言い返せばまた何か小難しい話をしながら、いかにその心配が理にかなっているかを説明し出すに決まっている。
頭の悪いスポーツ馬鹿にも付き合い切れないが、無駄に頭の良いスポーツ馬鹿は更に面倒だというのはエルヴィンと付き合いだして学んだことの一つだった。
[[「何度その話をすれば気が済むんだテメェは。」->2-A]]
[[「そうだな、大丈夫だとは思うが慣れるまでは気を付ける。」->2-B]]